高野山宿坊「一乗院」徹底ガイド(前編)

高野山には現在117の寺院が存在し、そのなかに、参拝者や観光客が宿泊できる「宿坊」と呼ばれる比較的規模の大きい寺院が52ヶ寺含まれています。寺社仏閣の数において他を圧倒する京都でさえ、参詣者や観光客に開放されている「宿坊」は決して数多くありません。高野山の「宿坊」の数は、間違いなく日本一ではないでしょうか。日本一高所にあるというスクランブル「千手院橋」交差点には、高野山宿坊協会という立派な施設さえありました。しかも真言宗という一宗派だけで52カ所ですから、高野山という聖地の「宿坊」に泊まり、非日常の世界を経験しながら1日を過ごす価値は計り知れません。今回、数ある「宿坊」のなかでも評判が頗る高い「一乗院」(22室)に宿泊することにしました。「一乗院」の開基は平安時代前期、定紋は藤、九条家菩提寺という大変由緒ある「宿坊」です。以下、予約からチェックアウトまでの一連のフローを、2019年3月下旬の宿泊体験に基づいて、前編(1日目)と後編(2日目)に分けてご説明します。

1)予約

公式HPやじゃらんなどの旅行サイトで空室を確認してから予約を入れます。部屋のサイズで多少宿泊費は異なりますが、そもそも客室数が圧倒的に少ないので、平日・祝祭日問わず、2~3ヶ月前から予約を入れておくことをお勧めします。「一乗院」に限らず、どの「宿坊」もかなり前から予約を入れておかないと希望日の宿泊は叶いません。

2)チエックイン

チェックインは15:00から17:00まで。自家用車で現地に向かう場合は、渋滞などで到着が遅れないようにゆとりをもってスケジュールを立てておきましょう。山門前の駐車場では若い僧侶が丁寧に出迎えてくれます。入口で内履き(スリッパ)に履き替えたところで、「塗香(ずこう)」と呼ばれるお清め香を両手に塗って清めます。ここですでに「宿坊」が一般の宿泊施設ではないことを強く意識させられます。修行の場所だということを滞在中は忘れないようにしましょう。門限は21:00、この時間を過ぎると閉門されてしまうので「宿坊」に戻れません。

3)館内案内と「竹」の間

若い僧侶が部屋まで案内して下さいます。入口向かって左の部屋はDVDや書籍を見ることのできるライブラリーになっています。途中、見事な回遊式庭園や大名が宿泊したという上段之間を通り過ぎます。上段之間の曼陀羅や狩野深齊の襖絵は必見です。宿泊者は自由に鑑賞できます。

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部屋(「竹」の間)に着くと、共同トイレ(とても清潔です)の場所・金庫の使用法・夜間の施錠法などの説明を受けます。このとき、写経(1000円)と翌朝の阿字観(1000円)を予約します。「竹」の間の床の間には竹の掛け軸。天袋にも竹があしらわれていました。床の間の落掛には初めて目にする切り絵が飾られていました。お尋ねしたところ、一年の無病息災・招福を祈念するしめ飾り<吉祥宝来>ということでした。切り絵は<壽>という字だそうです。

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4)夕食

17:30頃から各部屋に夕食が配膳されます。大変豪華な精進料理のフルコースで三の膳までありますから、宿泊する日の昼食は控えめにしておくべきです。献立には「春の花山吹」とあります。胡麻豆腐、蒸しちらし寿司、百合根や伏見唐辛子の油物などなど、高級料亭の趣です。アルコールはご法度かと思いきや、ビールや燗酒も注文できました。般若湯と隠語で勧められるかと思いきや、お酒も大丈夫ですよと勧められました。配膳も僧侶の修行の場ですから、スマホ撮影はNGとなります。

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5)写経

チェックインから夕食まで慌ただしく時間が過ぎます。写経は夕食後にテーブルを使って集中して行うといいでしょう。筆ペンと般若心経を印刷した紙+下敷が与えられますが、追加料金を支払えば毛筆で写経することもできます。写経は一字一字心を込めると綺麗に仕上がります。

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6)布団敷と暖房

写経中に宿坊従業員(宿坊寺院には僧侶のほかに、宿坊従業員・厨房従業員・料理人・パートもいます)が布団やマットを部屋に運び入れ、手際よく、寝所の用意をして下さいます。浴衣と帯は備えつけられています。3月下旬ですと、室内は暖房機器がフル稼働、寒がりの方はフリースなど防寒対策をして臨みましょう。

7)入浴

16:00~22:00までが入浴時間です。翌朝は入浴できません。浴室には洗場が5カ所、中風呂は天然の檜製、温泉ではありませんが、2009年に全面改装されたそうで清潔感溢れる浴室です。この日の中風呂からは美しい坪庭を臨むことができます。夏場(6月~9月)はともかく、それ以外の時期の最低気温はマイナス5度~10度前後。3月下旬で就寝時の外気温は0度でした。従って、入浴はなるべく遅い時間になさった方が湯冷めせずに済みます。

8)就寝

消灯時間はありませんが、お手洗いを済ませ、旅の疲れを癒すべく11:00には就寝すべきです。翌朝6:00には起床のアナウンスがあり6:30から勤行が始まりますから。