一般財団法人「東美鑑定評価機構」が美術品の真贋判定に加え、基準価格を提示する事業を始めるのだそうです。母体の「東京美術倶楽部(東美)」は株式会社組織で創業は明治40年、港区新橋に立派な社屋があります。会社組織との関係が今ひとつ判然としないのですが、全国の美術商約500から成る東京美術商協同組合が東美の展覧会等諸行事の運営の担い手ということなのでしょう。
10/1付けで東京美術倶楽部鑑定委員会が「東美鑑定評価機構」鑑定委員会に移管され、今後、基準となる値付けをすることになるようです。東美は物故作家の鑑定しか行わないので、文化勲章や文化功労者を受賞した大家やそれに準じる人気作家の作品が対象となります。例えば、梅原龍三郎の油絵1号は幾らという具合に価格の目安を提示することになるのでしょうか。「美術年鑑」などに掲載されている作家の号あたりの価格と大して変わらないような気がしてなりません。
版画やリトグラフなど例外もありますが、絵画や彫刻の類は基本的に作品ひとつひとつが別物です。同じモチーフであってもサイズや製作時期によって、価格は異なります。特に、日本では大作は展示スペースの関係で敬遠されるはずです。従って、作家ごとに細かいマトリックスを設けて価格を表示しないかぎり、実際の商談の役には立ちません。個人が絵を買う場合、概ねその作品が好きか嫌いか、予算に見合ったものかどうかで購入の可否を決するので、権威ある団体がプライスインディケーションを出したところで、購入判断に影響力を及ぼすことはないでしょう。一番気になる点は、金融取引のようにオファー(売値)とビッド(買値)の両サイドを提示してもらえるのかどうか。画商の仲介手数料(東美は15.8%)はべらぼうに高いイメージがあって、ヤフオクやebayのようなオークションサイト並みのコミッションになれば、取引の流通量も自ずと拡大するように思います。
「開運!なんでも鑑定団」のような真贋鑑定は、どことなく胡散臭く鑑定価格もいい加減だと言いたげな東美さんの新機構、どんな成果を出してくれるのか注目です。