急騰するJ-REIT投資に死角はあるのか(2/2) ?~J-REIT投資の安全弁セイムボート出資に着目すべし~

最近、イオンリート投資法人(3292)の公募増資に応募して投資口数を買い増したので、一例として本銘柄について分析することにします。同投資法人ポートフォリオは、イオンが運営するイオンモールだけで構成されるので、まさにイオングループ一色(マスターリース稼働率100%)です。従って、オフィス・レジデンス・物流倉庫など、投資法人毎にポートフォリオの内容が異なり一定のリスク分散が図られている銘柄とは、イオンリート投資法人は対照的な存在なのです。

投資法人の第13期資産運用報告によれば、ポートフォリオのハイライトは以下のとおりです。
保有物件数:40
★平均築年数:15.3年
★平均残存賃貸借契約期間:15.8年
★含み損益:+509億円(鑑定評価-期末帳簿価格)

イオンモールは都心では殆ど見かけませんが、地方へ行けば圧倒的な存在感と競争力を誇っています。イオンが「暮らしのプラットフォーム」と呼び、地域社会の「生活インフラ資産」と位置づけるのも至極当然です。2013年12月に誕生した巨大旗艦店イオンモール幕張新都心を訪れたときは、その規模とサービスの充実ぶりに圧倒されたものです。総合クリニック(ドクターランド)やペットホテルまで併設されているから驚きです。三大都市圏ならまだしも、地方でイオンモールが消失すれば大きな社会問題になりかねません。

そんな絶対無二の存在イオンモールが生み出す安定したキャッシュフローは、イオンリート投資法人においても大きな強みなのです。同投資法人にかぎらずJ-REITの大きな問題点のひとつとして、スポンサー(親会社)から投資法人が高値で物件を買わされるリスクが指摘されます。投資主(投資家)にしてみれば、買い叩いて欲しいわけですから、必然的に利益相反が生じます。言い換えると、イオングループ保有したくない物件を自らの支配下にあるイオンリート投資法人に売りつけ、投資法人ポートフォリオが劣化する可能性があるということです。そうした潜在的利益相反リスクを緩和し、投資主とイオングループとの利益の一致をめざす仕組みが、セイムボート出資と物件の共有だと第13期試算運用報告書に書かれています。

”in the same boat”という英語表現があります。文字どおり「同じ船に乗っています」という意味になりますが、苦楽というよりも困難な状況を共有しているという意味合いが強いように感じます。かつて身を置いた外資系金融の世界では、複雑でリスクの高い仕組債を組成して機関投資家に販売する際、自社でも相当額投資(own investment)して、販売促進に繋げたものです。

投資口保有比率19.9%保持に努めるという親会社イオンの宣言は、イオンリート投資法人への投資に一定の安心感を与えてくれます(2019/7/31現在:19.82%)。最近、公募増資に踏み切った三菱地所物流リート投資法人のケースでは、セイムボート出資は4.1%にとどまります。イオンリート投資法人は特異なケースだとしても、今後のJ-REIT投資において、スポンサーの投資口出資の割合の多寡を投資判断の大切な尺度のひとつとして位置づけておくべきでしょう。