五島美術館で漱石の『門』直筆原稿を見る

3連休の初日、天気がさほど崩れなかったので上野毛五島美術館へ出掛けました。駐車場が狭い美術館なので停められるか心配していたら、案の定、満車。係員から近くのコインパーキング情報を記した地図を貰ったものの、適当な場所が見つからず、また美術館へ逆戻り。幸い、1台分スペースが空いて、なんとか午前中の鑑賞にこぎつけました。

今回は専ら特別出品されている漱石の直筆原稿を見るために訪れたので、第一展示室中央の展示ケースの前にへばりついて、昨年6月に発見されたという『門』の4枚を凝視することに。所在不明だったこの4枚が見つかって、直筆原稿751枚がすべて揃ったのだそうです。

原稿を納める桐箱には、中村不折筆で「漱石居士遺稿」と書かれていました。『門』の原稿は三冊本に分収されています。「漱石山房」原稿用箋(版木は神奈川近代文学館所蔵)の文字で埋まったマス目をしげしげ見つめていると、漱石の息遣いが伝わってくるようです。筆致や推敲の跡からは漱石の思考の軌跡をたどることさえできます。

ワープロの普及で今や直筆原稿は稀覯本の類といって過言ではありません。長時間光にあてると万年筆で書かれた文字はすぐに退色してしまいます。こうした機会にしか見られな漱石の直筆原稿、じっくり拝まないといけませんね。