迷走するユーロ

昨夜、ブルームバーグに<ユーロ圏はねずみ講EU大統領が準備したロードマップは紙屑以下>と酷評するエール大学教授ローチ氏のコメントがアップされました。"Roach Says Euro Ponzi Scheme Won’t Get Fixed by Van RompuyPlan"、南欧ソブリンリスクを少なからず抱える身には些か堪えるヘッドラインです。ポンジースキームとは、EU大統領のファンロンパイ大統領の工程表を詐欺まがいの計画と揶揄した表現です。

カレンシーユーロ導入時にフランス系金融機関で働いていたので、通貨同盟発足時の欧州市場の熱狂ぶりは今も忘れられません。当時、顧客に配ったノベルティの時計にはユーロ・カウントダウンの表示機能がついていました。10年余りを経た今、皮肉なことにユーロ消滅に向かってカウントダウンの時が刻まれているようです。

鉄の女メルケル独首相の昨今の発言は、自分が生き永らえている間に欧州共同債の実現などあり得ないという表現に象徴されるように、ユーロの退路を塞ぐような方向に傾斜しつつあります。しかし、南欧諸国が低金利で購買力を強化できたお蔭で、東西統合を果たした新生ドイツが域内の輸出を拡大し国富を蓄えてきたという事実を忘れてはなりません。

政治同盟や銀行同盟の先後を論じる前にスペインやイタリアの国債入札が適切な利率で消化できるような枠組みを早期に講じるべきです。東京時間の正午過ぎに、ユーロ圏17カ国首脳がESMによるスペインの銀行融資に係る返済順位の優先権を放棄したという速報が流れました。各国首脳に包囲された格好のメルケル首相が譲歩を余儀なくされたようです。民間の国債保有者を敵に回せば国債の安定消化が難しくなりひいては命取りにもなりかねないことを、ユーロ圏首脳もやっと学習したのでしょう。同時に南欧国債の買取りにも具体化の動きが見え始めました。

迷走するユーロの行方はまさに濃霧のなか、世界経済の混乱を収拾するための有効な処方箋をユーロ圏首脳が提示できるかどうか、ユーロ通貨同盟の真価が問われています。