呆れた法務局の仕事ぶり

前回の続きになります。市役所で悪戦苦闘の末入手した住宅用家屋証明原本を携え管轄法務局へ出掛けたところ、新たな災難に巻き込まれました。念のため登記申請書の記載内容を相談窓口でチェックしてもらうと、その場で修正すれば足りる事項に加え、課税価格を証明する書類が必要だと指摘されました。生憎、納税通知書を持参しなかったので日を改めるしかないと思いその日は帰宅することにしました。

翌日、市役所から郵送されてきたばかりの納税通知書を持参の上、受付窓口へ直行すると、受付係は肝心の通知書には目もくれず事務的にホチキスで綴じた申請書類を受け取って引き下がろうとするのです。「納税通知書はご覧にならないのですか」と質すと不要との回答。前日の相談窓口の対応と矛盾するので、<二度足を踏ませてけしからん>と登記官に苦情を云って責任者の統括登記官にもご登場頂きました。

要領を得ない説明のなかでおぼろげに分かってきたことは、管轄法務局では課税価格を把握する手段がないので、課税価格を証明する書類が確認出来ない場合は市役所に問い合わせる必要があるということ(但し23区は法務局と区役所の間でオンライン稼動中)。さらに理解に苦しんだのは、法定添付書類ではないが登記を円滑に進めるために課税価格を証明する書類は提示が必要だという補足説明でした。提示が必要ならホームページ上できちんとお断りがあって然るべしなのに。自宅と法務局を車で往復すると15キロ余り、二度足のコストは安くはありません。結局この日は、憮然たる思いで納税通知書のコピーも添え登記申請書を提出し役所を後に。

3日後の登記完了予定日の10時過ぎに法務局を訪れると、あろうことか登記が完了していないことが発覚。窓口のある法務局3階のフロアの中央に座るくだんの統括登記官はカウンター越しに立って睨みつける自分に一瞥すらありませんでした。前回、東京法務局の担当部署に報告書を書くと約束した白髪の統括登記官は、受付日から3日間部下に本件に関する注意を促すことも登記進捗状況を確認することもなく漫然と日々を過ごしたのでしょう。民間であれば平謝りするだけでは決して済みません。減給・降格ものです。当日、保存登記を前提に建物を担保に供して借入を行う予定だったと仮定すれば、事態は一層深刻で会社の資金繰り破綻を招いたかも知れません。管轄法務局の仕事ぶりを見る限り、高額の固定資産(個人にとっては一生の大事)を扱っているという自覚も緊張感も感じられませんでした。

怒り心頭に達したので登記識別情報と登記完了報告書は自宅まで持参してもらいました。上席の統括登記官は顔色なく言葉少なだったので最後は矛を収めて受領印を押してお引き取り願いました。納期に間に合わなかった原因は、提示した納税通知書の確認を怠った法務局の明らかなミス。善意で添付したコピーもフルコピーではなかったので役立たずだったようです。経緯を知らない担当者は申請者である自分に電話一本入れないまま放置し、登記完了予定日を迎えてしまったというわけです。窮地に立たされた担当者は市役所まで出向いて課税価格の確認を余儀なくされたということでした。課税価格はプライバシーに属するので文書で確認するしか手がないそうです。本来必要なかったはずの法務局・市役所間の交通費や自宅までの交通費は誰が支弁するのでしょうか。この種の役人の怠慢に対して常に外部監査の目が光りペナルティが課されるような仕組みが切に望まれます。

新入社員だった時分、朝礼で<お客様の時間は決して無駄には致しません>と唱和させられたことを思い出しました。民主党政権下の事業仕分けはまだまだてぬるいと云わざるを得ません。コスト意識のかけらもない法務局の対応には呆れ返るばかりです。今後もこうした体たらくが続くようであればいっそ法務局の仕事も民間委託に切り替えてしまえばと思います。新規参入も競争もないお役所に業務改善を期待するのはそもそもないものねだりに等しいのかも知れません。