保存登記をめぐる狂騒曲

昨年の引越しから早1年が経とうとしています。2年前の暮れも押し迫った時期に、次年度の更地課税を回避するために拙速気味に自宅の表示登記を済ませたものの、所有権の保存登記をしないままこと今日に至りました。

不動産登記法上、建物が完成してから1ヶ月以上表示登記の申請を怠ると10万円以下の過料に処されるようですが、保存登記にはかかる制裁はありません。銀行借入をして抵当権を設定されるようなケースであれば保存登記は避けては通れませんが、自己資金や親族からの無担保借入で居宅の建設資金を賄えられれば保存登記がなくても何ら困ることはありません。金融機関からの担保借入の場合、例外なく金融機関ご用達の司法書士が登場して登記事務一切を取り仕切ってくれますが、手数料は大概交渉の余地などなく借主は言われるままに請求書に基づいた支払を余儀なくされます。

ただ、保存登記がなされないまま所有者が突然死亡したりすると、残された遺族はただでさえ煩わしい相続手続きに翻弄される上に所有権の帰属をめぐる厄介事に否応なく巻き込まれることになります。ペンディングにしてエンディングノートにでも書き残すという手もありますが、さすがに家族に迷惑をかける訳にはいかないと思い直し、役所を梯子して何とか申請できるところまで漕ぎ着けました。

申請書自体は至ってシンプル、A41枚で足りますが、記載内容には細かい部分で注意が必要です。家屋の課税標準は市役所の資産税課から送付される千円単位の課税標準額を記載し、新築の場合減免される登録免許税は100円未満切捨で構いません。添付書類は所有者の住民票(200円)と住宅用家屋証明書(1300円)ということになっていますが、市役所で後者の交付を受けるのに2時間以上足止めを食らう羽目に。表示登記が実際の竣工より5ヶ月も先行していたので、建設会社の引渡証明書に加えて未使用証明書まで要求されました。浮浪者ならいざ知らずライフラインさえ開通していない引渡し前の家を施主も含め一体誰が使用するというのでしょうか。誰が考案した手続きなのか分かりませんが、未使用証明書は割愛しても問題ないように思いました。

自分で保存登記をしてみると、以前自宅を建てた際に銀行付きの司法書士から請求された金額が法外だったことに気づかされます。半日程度犠牲にする覚悟さえあれば、節約したコストで家族をフルコースに招くことが出来ます。面倒くさがらないで大黒柱も汗をかくといいでしょう。