史上最多候補者56人が乱立する都知事選~無名候補を「泡沫候補」と呼ぶ勿れ~

人口1400万人超の首都東京のトップを決める選挙に史上最多の56人が立候補しました。有権者数は過去最多の1153万人です。2020年の前回選挙における立候補者数が過去最多の22人ですから、今回の都知事選は乱立・乱戦と言う外ありません。スポーツジムへ通う道すがらだけでも3か所、巨大なポスター掲示板を目にします。都内のポスター掲示場の総数は1万4230ヵ所。ポスター掲示場の枠は今のところ48ですから、用意された枠内に候補者全員がポスターを貼ることはできません。掲示場を管轄する市区町村選管曰く、増設するのだそうです。ところが、告示日から1週間が経ったというのに、近所の掲示板に貼られたポスター(写真・下)はわずか10枚です。街頭で候補者の乗った選挙カーを見たことさえありません。都道府県のなかで東京都の面積は下から3番目、と言っても、伊豆諸島や小笠原諸島(計11島)の島嶼部も含めれば、選挙区はかなり広域です。結局、往来の激しい新宿や渋谷へ出向かないかぎり、候補者の声を聞くことはなさそうです。

立候補した56人中17人が<NHKから国民を守る党>(以下:NHK党)から出馬しています。NHK党は、同党への寄付(1枠あたり25000円)の見返りに、ポスター枠を寄付者に提供すると明言しています。本来なら候補者自身をアピールするポスターが貼られるところ、寄付者は候補者と無関係な広告をうつことができるわけです。選挙の本旨を冒瀆するものだと選管に批判が殺到しているようですが、法令違反に当たらないのであれば、こうした奇抜な選挙活動も積極的に容認すべきだと考えます。

新聞メディアは、知名度の高い候補者以外を十把一絡げで扱います。そして、最初から「泡沫候補」だと烙印を押してかかります。300万円の供託金を没収覚悟で立候補する者は、よほどの変人か売名目的だと決めつけているわけです。立花孝志NHK党首はこう述べています。「われわれはどうしても大きく報道されない。したがって、こうして奇抜なことをしなけれないけない」のだと。既成政党を後ろ盾にする有力候補者だけで争う出来レースの如き選挙にはうんざりです。こうした旧態依然の選挙に風穴を開ける意味において、NHK党による候補者大量擁立は実に痛快です。

先に述べた隙間だらけのポスター掲示板にしても、貼らないのではなくて、貼りたくても貼れないのだと解すべきです。掲示板にポスターを貼り付けるのは、選管ではなく候補者陣営側です。選挙カーうぐいす嬢然り、夥しい数の掲示ヵ所にあまねくポスターを貼るためにはアルバイトを雇うしかありません。選挙にお金がかかるわけです。

そもそも、政治不信は今に始まったわけではありません。政権与党の国会議員が既得権者として立法府に居座る以上、腐りきった選挙制度を抜本的に見直すことは不可能です。選挙は茶番劇ですから。金と政治の問題にせよ、国会議員の定数(現在713:衆議員465+参議員248)大幅削減にせよ、既得権者に不都合な事柄には蓋をしたままです。つまるところ、革命でも起こさない限り、未来永劫、選挙制度は変わりっこありません。注目度の高い都知事選だからこそ、獅子吼さながら、無名の候補者には思いの丈をぶつけて欲しいものです。