すっかりハマった海外ドラマ『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』

最近の愉しみのひとつは、深夜にiPadを携えベッドに横たわって『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』(以下:『ジャック・ライアン』)を鑑賞することです。昨年、Amazon Prime Videoで配信が開始されるや、大ヒットになっているようです。

トム・クランシーといえば、デビュー小説にして映画化された『レッド・オクトーバーを追え』(1984年)があまりにも有名ですが、『ジャック・ライアン』シリーズは最新の国際情勢を巧みに取り込んで、軍事・諜報分野を得意とした故トム・クランシーの小説世界を膨らませています。配信中のシリーズ1&2は、リブート作品としては出色の出来栄えではないでしょうか。

海兵隊員にしてウォールストリートの元金融マンというキャリアを有する主人公ジャック・ライアン(ジョン・クラシンスキー)の人物造形も見事というほかありません。シリーズ1の舞台は中東、パリで大規模なテロを仕掛けるスレイマンは、さながらイスラム国の首謀者です。テロリストによる資金の不自然な動きを見逃さず、ケミストリーの合わない新任上司グリーアを説得して徐々に信頼関係を築き、ジャック・ライアンは上司と協力してテロ首謀者スレイマンを追い詰めていきます。全8回(エピソード1〜8)ですから、映画よりも遥かに深みのある人間ドラマが繰り広げられます。凄惨な殺戮行為の背後に横たわるテロリスト家族の苦悩や職務を隠してライアンが好意を寄せる恋人の存在など、見所満載です。キャスティングもさることながら、ロケーションハンティングも秀逸で戦闘シーンのリアリティは大作映画と比較しても全く遜色ありません。

シーズン2の舞台は、世界一の原油埋蔵量を誇るベネズエラ。ほかにも豊富な天然資源を有しながら、想像を絶するハイパーインフレーションが進むベネズエラでは凶悪犯罪が横行し、日本の300倍以上の頻度で殺人が発生しています。そんな情勢下、独裁者レイエス大統領統治に反旗を翻す女性大統領候補ボナルデに民衆の支持が集まります。次々と政敵や反体制派を葬ってきた大統領は現地入りしたベネズエラ出身の米上院議員を殺害、ライアンも命の危険に晒されます。対立候補に肩入れする米国の動きを封じ込めようとレイエス大統領は、アメリカ大使館に国外退去命令を下します。

ライアンは知性派でありながら、生来の正義感に発する感情をときに爆発させることがあります。友人の上院議員や側近の命さえ容赦なく奪うレイエス大統領に対するライアンの憎悪はますます募ります。国外脱出を拒否して残留したライアンとカラカス支局長の奮戦ぶりがシリーズ2の見どころになります。

古くはフレデリック・フォーサイスの『ジャッカルの日』、最近では第85回アカデミー賞作品賞を受賞した『アルゴ(ARGO)』を彷彿させるスリリングな展開が、『ジャック・ライアン』シリーズの大きな魅力です。シリーズ3制作も決定しているそうです。今からリリースが楽しみでなりません。