コロナ禍で虜になった海外ドラマ『24-TWENTY FOUR-』

今年10月、テレビ朝日が開局60周年記念ドラマ『24 JAPAN』を制作。ところが、視聴率は低空飛行どころか回を追うごとには下がる一方で、そのお粗末な出来栄えが話題になりました。いうまでもなく、世界各国で大ヒットした米FOX社制作テレビドラマ『24-TWENTY FOUR-』(以下:『24』)のリメイク版になります。1シーズン24話で1日の出来事を描くというリアルタイムサスペンス仕立てです。過激なテロリスト集団が仕掛ける様々なテロ攻撃に対して、CTU(Counter Terrorist Unitの略称)と呼ばれるテロ対策ユニットが不眠不休で対処します。福島原発事故を例に引くまでもなく、著しく危機管理能力の低い日本政府にCTUという組織を移植すること自体が笑止千万なのです。主人公ジャック・バウアー役に選ばれた唐沢寿明をはじめキャスト陣が気の毒でなりません。

日本版は当然スルーです。ステイホームのお蔭でシリーズ5途中まで視聴しました。amazon prime videoのprime会員であれば、シリーズ1~9(字幕版・吹替版双方)をすべて視聴することができます。吹替版の出来栄えも冴えています。CTUロサンジェルス支局捜査官ジャック・バウアーの吹替は声優小山力也さんが務めています。『名探偵コナン』の毛利小五郎役と聞けば納得ですね。コロナ禍の功罪は、これまで見逃してきた映画やドラマをじっくり自宅で楽しめたこと、その結果、相当な睡眠時間を奪われたことでしょうか。

シーズン1が初めて放送されたのは2001年~2002年。20年近く経った今見ても決して色褪せた感じがしません。海外のテレビドラマにこれほど嵌ったのは初めての経験です。最大の魅力はめまぐるしく状況が変化するスリリングな展開にあります。場面展開の要所要所で24時間表示のデジタル時計が登場し、心臓の鼓動のようなサウンドが秒単位で臨場感を増幅します。

次に特筆すべきは、主要な登場人物が次々と命を奪われ、シリーズが回を重ねる度にCTUに新顔が加わることですぶっきら棒でいつも不貞腐れた表情のクロエや太っちょのエドガーの容貌は、CTUという組織に凡そ似つかわしくはないのですが、情報分析官としては大変有能で、視聴者の眼にも次第に違和感のない存在となっていきます。こうした巧みな人物造型こそ、『24』を飽きさせない魅力のひとつなのです。なかでも、初の黒人大統領となるディビッド・パーマー氏の妻シェリーの憎まれ役ぶりは際立っています。聡明で器の大きいデイビッドにしては配偶者選びがお粗末すぎます(笑)。このアンバランスさがドラマのスパイスになっています。脇役陣もシークレットサービスのアーロンを筆頭に存在感を発揮しています。

苛酷なテロ対策の現場にありながら、非情な捜査官バウアーが意外にモテ男。シリーズが回を重ねるごとに老けて精悍さがなくなっていくにもかかわらずです。そして、CTU組織におけるオフィスラブは日常茶飯事。恋愛に翻弄されたのかバウアーさえ目が曇り、内通者に裏切られて妻を殺されます。ホワイトハウスCTUの組織に裏切者がはびこるあたり、脇が甘すぎるのではと思うのこともありますが、スピード感溢れる展開のせいでそんな瑕瑾もさして気になりません。ただ、その脇の甘さ故に、家族が人質に取られたり命を狙われたりと、テロリストの恰好の標的とされるのです。

潜入捜査、なりすまし、囮り捜査と、敵・味方双方で頻繁に化かし合い、勢い、銃撃戦は熾烈を極めます。シリーズを通して、ジャックは112人を殺したというデータがあります。銃撃戦は『24』においては日常茶飯事、奪取されたスティルス戦闘機が大統領専用機エアフォースワンを撃墜、大統領が瀕死の重傷を負う場面もあり、ありとあらゆる兵器が登場します。

『24』の虜になったせいで、長いステイホームのお正月も退屈しないで済みそうです。

【参考情報】<24-TWENTY FOUR-衝撃的な死を迎えた登場人物ランキングTOP30>がアップされたウェブページを見つけたので、リンクを貼っておきます。画像にショートコメント付きで『24』ファンなら必読です。

kaigai-drama-board.com