「文枝と小朝の二人会」を聴く

傘寿を迎えた文枝師匠をお祝いする落語会が各地で開催されています。昨夜、銀座ブロッサム中央会館で開催された「文枝と小朝の二人会」に足を運びました。東西落語会の重鎮ふたりが高座を務めるとあって、会場は満席でした。6月は、銀座を皮切りにあと4ヶ所で同様の落語会が開催されます。

落語の場合、歌舞伎やクラシックのコンサートと違って、当日まで演目(ネタ)が分からない場合が多々あります。何が聴けるか分からないのも落語会の楽しみのひとつです。写真(下)は、終演後、バックヤードに掲げられた演目リストです。

トリを務めたのは年下の小朝師匠。「(高齢の)文枝師匠を20時以降働かせるわけにはいきませんから」と断って、会場の笑いを誘います。

文枝師匠は、『誕生日』を披露されました。師匠の得意ネタのひとつ『妻の旅行』の続編を思わせる展開です。マクラが絶品でした。ボケ始めた夫は、オカンと連れ立って訪れた診察室を訪ねたものの、医者の質問に上手く答えることができません。オカンに叱られ叩かれながら少しずつ本音を吐露していきます。小朝さん然り、澱みなく本題へと誘う小噺の切れ味はさすがと言うしかありません。子沢山の父親の米寿を祝う会に集まった子供たちとボケの始まった父親の何とも噛み合わない会話が聴きどころです。さしずめ、傘寿を迎えた文枝師匠の未来予想図でしょうか。

後半、小朝師匠が高座に上がると、いきなり歌舞伎の話を始めます。歌舞伎ファンを自意識過剰だと揶揄しながら、一方で服装を気にしない落語ファンをからかって会場を笑わせます。披露されたのは人情噺『中村仲蔵』、一代で仲蔵の名を大名跡へ押し上げた初代・中村仲蔵(1736-1790)の立身出世噺です。初めて聴く演目だったので、リズミカルに繰り出される小朝師匠のセリフの細部に理解が及ばず、消化不良のまま終演となりました。講談師の6代目神田伯山が得意とする演目だとあとで知りました。弁当幕と呼ばれた『仮名手本忠臣蔵』五段目の斧定九郎(おのさだくろう)、俄然、歌舞伎で観たくなりました。