2023年大学入学共通テスト|"Enter through the narrow gate"

今年で大学入試共通テストは3回目を迎えます。共通テストの先駆け、共通一次テスト(正式名称:「大学共通第1次学力試験」)が導入されたのは1979年から。その前年は旧制度最後の受験だったので「あとがない53年度入試」と云われ、当時の高3受験生は現役合格をめざそうと慎重な志望校選びに走りました。巷間、浪人すれば不利になると囁かれていたからです。自分もそんな入学試験制度改正の狭間で翻弄されたひとりです。

共通一次は11年続き、1990年から「大学入試センター試験」に衣替えされ、2021年から名称が「大学入学共通テスト」に改められました。息子ふたりはセンター試験世代なので、今更、親として「大学入学共通テスト」もへったくれもありません。さりながら、毎年、全国紙にデカデカと問題と解答が掲載されるので、気が向けば時間を計って解いてみたりします。因みにセンター試験から共通テストへの移行に伴う大きな変更点は、数Iの試験時間が60分から70分に延長され、英語のリスニングの配点が50から100に倍増され、リーディング(従来の筆記から名称変更)の配点が200点から100点に圧縮されたことです。帰国子女が大喜びしそうな配点変更ですが、生きた英語を身につける上ではリスニングスキルの向上はマスト、好ましい変更だと受け止めています。

英語のリーディング問題は実用的な文章の読解力を試す問題が目立ちます。キャンプにおける正しいバックパックの方法をイラストで選択させたり、バスや電車を利用する学生に通学時間を有効に使う方法を提示したりと内容自体に実用に即した有益性が認められます。平均的受験生には80分はきっと短く感じられることでしょう。処理スピードが得点率を左右します。リスニングは60分という長丁場ですが、集中力を途切れさせなければ、日常生活に直結した場面設定が多く与しやすいと判断しました。1回のみのリスニングパートも含め、設問にざっと目を通してから聴くこと。科目にかかわらず<設問から入る>、これが得点アップの鉄則です。

国語の冒頭の一文は、デザイン評論家・柏木博氏の『視覚の生命力』(岩波書店・2017年)からの引用でした。引用文献のタイトルにさえ気づけば設問2はクリアできます。病床に臥せる俳人・子規が虚子の勧めで当時珍しかった板ガラスの障子に切り替えて生命力を回復させるエピソードと、コルビュジエが重視する「窓」の視覚機能を絡めた展開は示唆に富む内容で、試験でなければじっくりその先を読みたいところです。さらに別の作者の文章を読ませ、今度は「壁」の役割について考えさせます。

文科省の大学調査によれば、2020年度の私大入学者の56%がAO・推薦経由だといいます。いまだに一般入試が8割近い国公立大学とは好対照です。今日、選択肢として安易な入学ルートが複数存在するなか、5教科7科目の大学受験に挑むのは大変勇気のいることです。しかし、試練が多ければ多いほど人は鍛えられると思っています。大学受験は長い人生のほんの一コマに過ぎません。受験生諸君には、無限に拡がる知の地平線を切り拓いていくために、苦手な科目にも取り組んで確固とした羅針盤を携えて欲しいものです。

新約聖書』マタイ福音書第7章第13節にこうあります。

<狭き門より入れ。滅びに至る門は大きく、その路は広く、これより入る者多し。生命に至る門は狭く、その路は細く、之を見出す者少なし>