フランス人にたぎる革命の血潮〜マクロン政権への不満〜

今月1日、クリスマスシーズンを迎えたパリ、しかも観光名所の凱旋門周辺で、マクロン政権に対する大規模な抗議デモが行われ、数百名の逮捕者が出たと報じられました。直接のきっかけは燃料税の引き上げだったようですが、これに限らずマクロン政権への様々な不満が一気に市民の抗議行動へと駆り立てたのだと見られています。結局、現政権は燎原の火の如く全国に広がりかねないデモの鎮静化を図ろうと、燃料税の引き上げを一時的に凍結する措置を講じました。

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文化芸術の都市パリとデモという組み合わせに違和感を覚える人は多いのではないでしょうか。かつて、日本にも政治的に熱い時代が存在しました。特に、60年代から70年代にかけて、安保や三里塚闘争をめぐって日本中に拡散した過激な学生運動や抗議活動は今もなお語り継がれています。しかし、浅間山荘事件以降、急速に学生運動の勢いが萎んで為政者にとって好都合な状況が生まれて久しいのです。結果、今や、政治的無関心層、無党派層が圧倒的多数派となって、日本人は政治的に去勢されてしまった感さえあります。日本人という民族には政治的活動や意見表明を持続するDNAが欠けているようにも思えます。

これに対して、フランス人は政治的意見表明をすることを躊躇わないと言われています。フランス革命の嚆矢は1789年7月14日のバスティーユ牢獄襲撃。フランスの三色旗の青色が意味するのは自由、その自由や権利を血で血を洗って市民が獲得してきた経験値は、脈々と現代のフランス人に受け継がれているように思います。1968年5月に起こった「5月革命」から50年の節目の年に起きた今回の騒動も、決して偶然ではないような気がします。しかも、大学制度改革に対する不満もマクロン政権不信の火種であり、「5月革命」との近似性が見いだせます。これまでバカロレアさえ通れば、高校時代の成績やバカロレアの点数にかかわらず、アルゴリズム計算に基づき、ある意味、平等な選抜が行われていたフランスの大学入試制度は、今年1月から「パルクールシュップ」が施行されて一変。内申書や試験成績も加味され、人気学部へ進学しようとすると厳しい選抜プロセスが待ち構えています。ある意味、三色旗のもうひとつのカラー白が意味する平等、教育機会の平等が危機に直面しているともいえます。政治的な不満が募れば、SNSによる口コミなんて穏便な手段に頼らず、伝統的な示威行動も辞さないフランス人には、今も革命の血潮がたぎっているのでしょう。