1本のロウバイを守った心がほっこりする話

「人々つなぐ1本のロウバイ」と題した新聞記事(2021/1/13付け朝日新聞朝刊)を読んで、思わずほっこり!先週、緊急事態宣言が再発出され、紙面はますますコロナ関連の暗いニュースばかり。対照的に心温まるとてもいい話だったので、ご紹介しておきたいと思います。

玉川上水に架かる「ほたる橋」からほど近い場所にあるそのロウバイの木は、黄色い花を咲かせ今が見頃です。主は手織工房じょうた吉祥寺工房を運営する城達也さんです。半透明で鈍いツヤのある黄色い花びらがまるで蝋細工のようなので、漢字を当てると「蠟梅」になります。ロウバイの背丈は2階屋根に届かんばかりです。この時期、甘い香りを漂わせているので、隣接する玉川上水沿いの遊歩道を歩けば、その存在にすぐ気がつくはずです。

城さんがこの地に引っ越してきたのは2018年6月。更地を購入し自宅兼工房を建設した城さんですが、更地だったその1年ほど前から切り倒されずにこの1本のロウバイがあったそうです。不動産業者からは、前の所有者から<切らないで残してほしい>という希望が伝えられました。といっても、あくまで希望なので城さんが応じる法律上の義務はありません。

城さんはもとよりそのロウバイを残すつもりでした。ロウバイに次のようなメッセージカードが掛けてあったそうです。

<地域のみんなが大好きなこのろう梅を少しでも長い間切らないで残しておいてもらえないでしょうか。お願いいたします!>

建物が竣工してまもなく、ロウバイが開花すると次々とメッセージが寄せられました。

<やさしいお気持ちのおかげでろう梅は今までにないくらいたくさん花をつけ、見事に咲きました>

<今年も蠟梅の香りを楽しむことが出来ました。新しい施主様にも、前の家主さんにも感謝です>

井の頭恩賜公園の近隣に住む者のひとりとして、前の家主の希望を汲んで1本のロウバイを守った城さんとメッセージを寄せたご近所さんの心馳せに胸を打たれました。以前、我が家と道路を挟んだ一軒家に見事なミモザの木が植わっていて、毎年春になると鮮やかな黄色い花を咲かせてくれたものです。ところが、数年前にその一軒家が人手に渡ると、いつの間にかミモザの大木は切り倒され、コンクリート張りの駐車場になってしまいました。こんなエピソードを知って、もしかするとミモザの木を残せたのでは・・・とちょっぴり後悔の念に駆られているところです。他人の庭であっても、四季折々、そこに息づく木々の彩りを愉しむ人がいる、そんな街に愛着が募ってきました。

昨年2月、たまたま日当たりの悪い我が家の小さな庭にもロウバイが仲間に加わりました(写真下)。素心ロウバイの苗木を植えてから約年が経ち、少しずつ蕾が膨らんできました。城さんのお庭のロウバイのように大きく育って欲しいと願っています。