<六道珍皇寺>には冥界に通じる井戸ふたつ

同級生との2泊3日の旅行最終日(薄曇りの今月5日)は京都観光でした。ホテルで建仁寺境内を突き抜け、我々の干支猪に因む摩利支天さんを祀る塔頭禅居庵をお参りし、その足で<六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)>へ向かいました。周辺には幽霊子育て飴を今に伝える「みなとや幽霊子育て飴本舗」や「六道の辻地蔵尊」で知られる西福寺があって、辺り一帯に霊気が漂っているように感じます。平安京の御世、葬送の地鳥辺野の入口にあたり、現世と冥界の境界だったというただならぬ気配は今も健在なのです。

自分は何度も訪れているので、今回は専ら、同級生の道先案内人に徹しました。<六道珍皇寺>には閻魔王宮の役人と呼ばれた参議小野篁百人一首に採用されています*)と閻魔様の像が安置されているので、これを見てもらいたいと思ったわけです。山門をくぐると右手にテントが張られ、物々しい雰囲気。受付の人に尋ねると、10/1から非公開文化財の特別公開が始まったところで、修復が終わったばかりの木造毘沙門天立像(伝:弘法太師作)や普段は非公開の冥界に通じる井戸が見られるというので、拝観料1000円を支払って入場しました。

鐘楼で「迎え鐘」も撞かせてもらえました。撞くと書きましたが、鐘楼に収まった鐘は外部からは見ることができません。鐘楼の小さな窓を通して鐘に繋がっている綱(ロープ)をスルスルと引っ張って鐘を鳴らすのです。鳴らせば十万億土に響き渡ると言われています。<六道珍皇寺>では、盂蘭盆会に先立って、8月7日から10日までの4日間(「六道詣り」)、精霊を迎えるため、多くの参拝客が訪れます。この日も周りの拝観者は京都の方ばかり、「六道さん」と親しまれている所以です。

本堂に飾られた地獄絵図を見た後は、本堂背後の庭に降りて「冥土通いの井戸」を、次いで「黄泉がえりの井戸」を覗いてみました。深さは100メートルに達するそうです。輪廻転生と書かれた「黄泉がえりの井戸」はつい最近(2011年)発見されたのだと知りました。寺社の敷地からはみ出たような場所にあり、新たな井戸が見つかった際、寺域に編入したのでしょうか。クリスマスツリーに巻いて飾るペッパーランプが井戸の底に向かって垂れ下がっていて、果てしなく続いているようでした。発声すると深い反響音が返ってきます。

たまたま立ち寄った<六道珍皇寺>で、普段は見られない冥界に通じる2つの井戸を見学できたのは大きな収穫でした。ご朱印帖を持参しなかったので、写真のような墨書を頂いてまいりました。それにしても京都の懐はかぎりなく深い!

小野篁「わたの原 八十島かけて 漕ぎ出でぬと 人には告げよ あまのつりぶね」(隠岐島流しされる際詠んだ歌)