シネマレビュー:”The Bucket List” (2007年)

吉永小百合X天海祐希主演の映画『最高の人生の見つけ方』が上映中・・・どこかで聞いたようなタイトルだと思ったら、ジャック・ニコルソンモーガン・フリーマン共演の同名映画(2007年)のリメイクでした。ネット上では低予算も手伝ってハリウッド版の味わいを損なうという批判が散見されます。劇場に足を運ぶ気には到底なれません。なにより、この邦題がどうにもしっくりこないのです。

最近、WOWOWで配信されたので、久しぶりにハリウッド版"The Bucket List"を再視聴しました。いつものことで、細部は結構忘れていて、新鮮な感動を味わえました。歳月を経ても制作当時の輝きを喪わないのがいい映画の条件のひとつですね。冒頭で大富豪のエドワード(ジャック・ニコルソン)が会議そっちのけでベトナムの高級コーヒー豆「コピ・ルアク」を挽いたコーヒーを嗜む場面なんて、後半の<涙がでるほど笑う>という大切なシーンへの伏線なのに、すっかり忘却の彼方でした。今年7月、ハノイで買った「コピ・ルアク」のブレンドエドワードがの飲んだ代物とは比べものにならないでしょう・・・本物が飲んでみたい!)を試したばかりなので、このシーンはしっかり記憶に刻まれました。

英語圏では、"Wish List"とか”To Do List”という言葉は日常生活でも頻繁に使われます。”The Bucket List"はさしずめ終活リストでしょうか。余命6ヶ月を宣告された勤勉実直な自動車整備工カーター(モーガン・フリーマン)と大富豪実業家エドワードのふたりは、相部屋の病室で偶然出会って意気投合、イェローパッドに死ぬまでにぜひともしておきたいことを箇条書きにして、次々と実現していきます。カーターは最愛の妻と家族からしばらく離れ、エドワードと共に生涯最後の冒険へと旅立ちます。プライベートジェットでセレンゲティクフ王のピラミッド、タージマハールと世界中を旅しながら、ふたりは次第に胸襟を開いて本音を語り合うようになります。モーガン・フリーマンジャック・ニコルソンという当代きっての名優ふたりの初競演作が”The Bucket List”とは、天の配剤としか思えません。脇役では、ふたりの冒険旅行を蔭で支えたエドワードの秘書トーマス(ジョン・ヘイズ)が好印象でした。生真面目な一方、親子ほど年の違うふたりに敬意を払い、ときにユーモアをまじえながら気遣いを忘れないトーマス役のジョンは、間違いなく最優秀助演賞でしょう。

この映画が心に響くのは、主演のふたりが恬淡と最期を迎えるのではなく、人間らしくもがき苦しみながら、人生のラストステージと真摯に向かい合うところです。その結果、最期の3ヵ月でかけがえのない友人を得るという最高の幸せを掴むのです。人生において大切なことは、人それぞれ違います。ただ、この映画を観ながら脳裡に浮かんだのは、チャップリンの映画『ライムライト』の名言 ” Yes, life is wonderful, if you're not afraid of it. All it needs is courage, imagination, and a little dough"でした。人生に必要なものは、勇気と想像力、そして少しのお金。ふたりに病床を飛び出す勇気があったればこそ、心から満足ゆく最期が迎えられたのだと思うのです。

そろそろ、"My Bucket List"を作り始めようかと思っているところです。カーターのように、トップは”Witness something truly majestic"(荘厳な景色を見る)で決まりでしょう。