『こち亀』の聖地亀有で第200巻を買う!

9月17日の昨日は『こち亀』の最終巻となる第200巻の発行日でした。今月4日に40年に及んだ『こち亀』の連載が終了すると知って本当に驚きましたが、とうとう『こち亀』最後の日を迎えることになりました。普段なら発売日に長男がコンビニで買ってくるところですが、記念すべき最終巻ですから、亀有で買い求めようと長男と共にJR亀有駅を目指しました。写真は今年8月7日にお披露目されたばかりのカラーの銅像です(大原部長は左隅で掲示板から顔を覗かせています)。


こち亀』とは長男が中学生になったばかりの頃からのお付き合いですから、連載が開始された1976年からずいぶん経ってからになります。それでも通算17年あまり、『こち亀』を愛読してきたことになります。勿論、我が家の本棚には単行本が全巻揃っています。

今や、サブカルチャーというより日本を代表する文化に数えられるコミックス、そのなかでも『こち亀』は特別の存在です。警官両津勘吉を主人公にしたギャグ漫画に分類されがちですが、そんなありきたりな器に収まら切りないところが『こち亀』の魅力です。

確かに、作者の出身地の葛飾区亀有にある架空の亀有公園前派出所を中心に繰り広げられるギャグストーリーが起点には違いありませんが、ユニークな登場人物を次々と繰り出してきて、舞台は日本各地から世界へ宇宙へと拡がります。そのスケールの大きさがそこいらのコミックとは一線を画すところです。

連載が長期化すればするほど、読者の作者への期待度(要求水準)は高まるもの。少しでもマンネリ化すれば忽ち飽きられてしまうというのが人気コミックの宿命です。ところが、作者秋本治さんの目配りする世界は途方もなく広く、40年にわたる時代状況の変化を敏感に察知して、日常生活や娯楽に始まり、政治経済や日進月歩の技術革新に取材したストーリーを拵え、その都度、読者をうならせてきました。最終巻でもドローンや自動運転EVといった最新技術にフォーカスしていて、改めて作者の守備範囲の広さを思い知らされました。世代を超えて読者に愛される所以です。

ギャグ漫画にありがちな大胆な省略やデフォルメを寧ろ避けて、ひとコマひとコマ細部までリアルに描写する作者のスタイルも自分の好みでした。きっと優秀なアシスタントを抱えているに違いありません。本当に驚くほど精緻に対象が描かれているのです。作者の大好きな高級外車にはじまり、機械式時計や戦車から東京スカイツリーに至るまで・・・・神は細部に宿り給うといいますが、マニアックなこだわりは尋常ではありませんでした。


それでいて、日本の伝統に無関心かというと真逆で、歌舞伎や武道全般を真正面から取り上げ、ユーモア溢れる切り口で小中学生にも分かるように解説してくれます。食文化も然りで、ギャグを交えながらマグロの種類や蓄養について語ってみせます。『こち亀』全200巻は優れた百科全書に匹敵するといって過言ではありません。

その上、『こち亀』は、若い読者に長い人生を生きる上で大切な知恵をさりげなく授けてくれます。破天荒に見える両津勘吉の立ち居振る舞いから、読者は儒教でいう五常の徳を学ぶことさえできるのです。


昨日、JR亀有駅周辺にはファンが大勢詰めかけていて、思い思いに写真を撮ったり会話を交わしたりしていました。改札口前の床が一面単行本の表紙でラッピングされていて吃驚しました。訪れたファンの感慨はひとしおだったと思います。連載終了は残念ですが、これからも両さんはずっと家族の一員ように心のなかで生き続けてくれることでしょう。両さん、長い間、本当にお疲れ様でした!