ソロモン・R・グッゲンハイム美術館は見逃せない!

NY滞在の主目的をスポーツ観戦にしたため、宿泊先に近いMoMAや昨年改装したばかりのホイットニー美術館も諦め、グッゲンハイム美術館だけを訪れることに。早朝、ゆっくりセントラルパークを散策しゼイバーズのデリで腹ごしらえをしてから、目的地に向かいました。


設計は日本人でもおなじみのフランク・ロイド・ライト、カタツムリのような奇抜な外観のせいでしょうか、彼の設計案が1949年にスポンサーのソロモン・R・グッゲンハイムに承認されてから、竣工するまで10年を要したそうです。前例のない建物外観に面食らったNY市の審査担当者が許可を出すのを渋ったとも云われています。


入館してまず圧倒されるのが贅沢な吹き抜け空間と天蓋から差し込む明るい光。6層の螺旋状構造が採用されたことで展示スペースはかなり圧縮されてしまいましたが、代わりに極上の開放感がもたらされました。こうした円形建物はロタンダ(rotunda)と呼ばれます。理想的な鑑賞方法はただひとつ、ホール左手の小さなエレベーターで一気に最上階まで上がり、螺旋階段をゆっくり下りながら鑑賞するというものです。回廊の床が少しづつ傾斜しているので落ち着かないという声もあるようですが、むしろ異形のアート建築と展示作品のコラボを虚心に楽しんだらいいのではないかと思います。


グッゲンハイム美術館と似た構造をもった建造物が会津若松市に存在します。六角三層のさざえ堂と呼ばれるこの不思議なお堂は、二重らせん構造になっていて右回りに上り最上階から左回りで降りるため、上りと下りの人がかち合うことは決してありません。浮世絵の収集家でもあったフランク・ロイド・ライトがこのお堂から着想を得ていたとしたらなんて想像を膨らませながら、階下へと歩を進めました。


今回はバウハウスの教師であり実験的造形作家としても知られるモホリ=ナギの大回顧展が開催中でした。現代美術のコレクションに特化するグッゲンハイム美術館らしい企画といえます。並行して、中東と北アフリカの現代美術展も催されていました。ユニークなインスタレーションやディスアポラと呼ばれるイスラエル国外の居住地をテーマにした作品が目を引きました。


膨大な作品群を収蔵するメトロポリタン美術館MoMAで過ごす時間的余裕のない向きには、小ぶりなグッゲンハイム美術館がお薦めです。そして、少し鑑賞にくたびれてきたら、セントラルパークを望むカフェで寛いだ時間を過ごすといいでしょう。