『M-1』観戦記〜笑う門には福来る〜

クリスマスイブの24日夕方、久しく遠ざかっていた『M-1』を観ようとテレ朝にチャンネルを合わせました。有馬記念(GI)の馬券を取って気持ちが高揚していたせいでしょうか。お笑いと言えば、2003年から2010年まで毎週土曜日にレギュラー放送されていた『エンタの神様』(日テレ)も結構好きな番組でした。当時のイチ推し芸人の双璧は、サンドウイッチマン(富澤と伊達)とディラン&キャサリンなだぎ武友近)です。

歴史的にお笑いブームは栄枯盛衰を繰り返すようで、『エンタの神様』や『M-1』が終了したり中断したりするのは半ば宿命なのかも知れません。『M-1』から遠ざかっていたのは、最近のチャンピオンが自分にはさして面白いと思えなくなったからです。令和のお笑いや如何に。

史上最多の8540組がエントリーした『M-1』グランプリ2023年のチャンピオンは「令和ロマン」。決勝に進出した10組のうち最終決戦に臨んだ3組の出来栄えは甲乙つけ難く、大いに笑わせてくれました。されど、持ち時間4分を最大限活かしたボケの体当たりのパフォーマンスに絶妙な合の手を挟む「令和ロマン」の話芸の完成度が勝りました。優勝候補筆頭「さや香」のネタは「見せ算」。ツッコミを無視した暴走に近い新山による怒涛の4分間プレゼンは、1回聞いただけでは何が何だかです。審査員に不評だったのは尤もです。しかし、もう一度録画を見てみると、「五則演算」の奇抜なプレゼンにはそれなりのロジックがあって、新しい漫才への挑戦だと思いました。

笑う門には福来ると言います。年の瀬は、とっくに旬を過ぎた紅白歌合戦なんかよりお笑い番組の方が遥かに面白そうです。慶應のお笑いサークル出身だという「令和ロマン」のツッコミ・松井ケムリは長男の中高の後輩でした。父親が大和証券副社長と聞いてさらに吃驚です。安易なサラリーマンの道を捨てて、熾烈な競争社会である芸能界に敢えて挑む高学歴コンビの今後の活躍を応援したいと思います。大晦日の今日、新聞を開いたら『M-1はじめました。』(東洋経済)という本のタイトルが躍っています。普段ならスルーするところです。著者・谷良一さんは吉本興業ホールディングスの元取締役。これもご縁。2024年は漫才や落語にも足繁く通ってみたいと思います。