信楽の瓶子にカサブランカ

息子が母の日にプレゼントしたカーネーションの鉢植えがそろそろ萎れてきたので、当月下旬にバースデイを迎えた家内へカサブランカの花束を贈りました。カサブランカの花は「ユリの女王」と呼ばれるだけあってゴージャスで上品、しかも芳香が素晴らしいので、女性ならずとも惹かれます。カサブランカは1970年代にオランダで誕生した園芸品種。作出されたのはつい最近なのに、瞬く間に世界で愛好されるようになったそうです。

生花店から届いた大箱から花束を取り出した家内は、大輪のカサブランカを活ける花器をごそごそと探しはじめました、思案の末にたどりついたのは信楽焼の瓶子。高さが30センチ弱あります。そもそも瓶子(へいし)とは、壷の一種で上胴が膨らみ口縁部が細く窄まった形状の器のことです。主に神事の際に、お神酒を入れる器として使われるものです。

瓶子裾の黒褐色の焦げ(灰かぶり)と艶やかな白い花弁とのコントラストが絵になります。近づいて見れば、披針形の葉にスルリと伸びた葉脈がいいアクセントになっています。透明で細長いガラス製花器より断然相性がいいように思います。山野草と瓶子の取り合わせは抜群ですが、無彩色なら西洋の花を活けてもそれなりに恰好がつくことが分かりました。

花人を名乗る川瀬敏郎さんの『一日一花』(新潮社)のように、信楽の瓶子に山野草をのびのびと一輪挿しにしても愉しめそうです。