潜水艦を扱った戦争映画は見逃さないようにしています。戦争映画のなかでも潜水艦映画には傑作が多いように思います。古くは、「U・ボート」(1981年)、近年では「レッド・オクトーバーを追え!」(1990)や「クリムゾン・タイド」(1995)が潜水艦映画の白眉ではないでしょうか。深海という逃げ場のない密室は、平時でさえ乗組員にとって過酷な環境を生み出します。そして、ひとたび、駆逐艦や航空機の攻撃に晒されれば、危機的状況に追い込まれます。商船や輸送船にとって大いなる脅威の潜水艦の運命もまた大海に浮かぶ笹舟の如しなのです。
ドイツのUボートは第一次大戦ではめざましい戦果を挙げたものの、イギリスを中心とする連合国側が優れた対潜兵器を開発したため、第二次大戦では建造された潜水艦(1131隻)の75%を喪失するという悲惨な末路を迎えてしまいました。
米Huluが製作した新作ドラマ「Uボート ザ・シリーズ 深海の海」は全8回。母港はラ・ロシェル軍港、テーマ曲も旧作を踏襲しています。ソナー音だけを頼りに目に見えない敵と戦わなければならない非情な世界は不変です。新作は、先任と偉大な軍人を父にもつホフマン艦長との対立軸を中心に、米国へ渡りたいと願いながら不本意にも乗艦を命じられた通信兵フランクとその姉シモーヌの姉弟愛が絡んで、水・陸(アルザス)を舞台にスリリングな人間ドラマが展開します。全8回の長編ドラマだけに見応え十分です。ホフマン艦長が命じられた極秘任務は予想もしない結末を導くことになります。
出航すれば、数か月間浮上しない潜水艦乗組員任務の特性上、女人禁制と思われがちですが、我が国の女性自衛官の配置制限が全面的に解除され、昨年、潜水艦乗組員に女性自衛官も起用できることになったそうです。これに伴い、おやしお型潜水艦に女性区画が整備されることに。居住性が劣悪な潜水艦(原子力潜水艦はかなり改善されています)に女性が乗り組むとなれば、トイレやシャワー室などハード面はもとより、食事やメンタル面への配慮がより重要になります。映画では伝わりにくい燃料・排気・カビなどがもたらす艦内の異臭も気になります。新作「Uボート」においても、潜水艦クルーの任務の過酷さは依然として想像を絶するものでした。