極上のオートキャンプサイト(後篇)| "Snow Peak MUSEUM" 見学

スノーピーク本社キャンプフィールドに滞在中、本社屋に併設された”Snow Peak MUSEUM"を見学しました。2019年に設置された比較的新しいアトラクションです。週末・祝日は以下のとおり各日3回、無料で見学ツアーが開催されています。所要時間は40~50分ですから、キャンプに熱中するあまり、”Snow Peak MUSEUM"をスルーしてしまうのは勿体ないと思います。スノーピーカーならずとも一度は訪れる価値があると思います。

見学ツアーの前半は、本社スタッフが働く職場をガラス張りの廊下から俯瞰します。進行方向右手が職場、左側がミーティングルームになっています。ミーティングルームの窓越しにどこまでも続くキャンプフィールドが見渡せます。唯一無二の景色を目の前に来客は皆圧倒されてしまうことでしょう。週末なのでオフィスは無人でしたが、その設えはスタイリッシュそのもので、宛ら米IT企業を思わせます。屋外にはスプリンクラーが設置され、開発中のシェルターやテントの耐水実験が行われているそうです。

[

階段を下りて地階へ進めば、”Snow Peak MUSEUM”です。最初にスノーピーク60年の歴史をダイジェストしたフィルムが上映されます。上映時間は約10分、日本のキャンプシーンを根底から覆す革新的なオートキャンプを創造したスノーピークの歩みを振り返ることができます。創業者は谷川岳・一ノ倉沢でクライミングに熱中していた山井幸雄、オリジナル登山用品の開発からスタートしました。創業精神を受け継いだ現社長の山井太が、オートキャンピングのブランド確立へと舵を切ったのです。1987年、最初にリリースしたテントの価格は16万8000円。最良の素材とテクノロジーを使い悪天候に耐え得るだけでなく快適性まで実現した結果の高価格でしたが、古参社員はこれでは売れないと笑ったそうです。ところが、悲観的な予想に反して100張も売れたのです。オートキャンプ文化の夜明けの瞬間です。

それから36年。各地のオートキャンプ場で圧倒的シェアを誇るのがスノーピークのシェルターです。なかでも、スノーピークの代名詞とも言える「ランドロック」が目立ちます。初代「ランドロック」が誕生したのは2009年。その後、細部にわたって改良が続けられているとはいえ、フレームワークには一切手が加えられてはいません。その開発秘話を知れば知るほど、スノーピークが情熱を傾けて作り上げた「ランドロック」の偉大さが分かるはずです。

見学ツアーを終えてキャンプフィールドを散策すると、D区画に「ランドロック」ばかりが密集していて壮観でした。多数派のミニバンやSUVに混じって、ポルシェでやって来たソロキャンパーを見つけました。思い思いのスタイルでキャンプを愉しむのはビジターのキャンパーだけではありません。本社勤務のスタッフのなかには、設営したテントから出勤する強者もいるのだそうです。キャンプチェアに腰を下ろし遥か彼方の稜線が茜色に染まりゆく景色を眺めていると、時の経つのを忘れてしまいそうになります。ここにあるのは、日本中どこを探してもないキャンプの理想郷(ユートピア)なのです。