仏大統領選決選投票は5/7〜事実上のEU信任投票へ〜


昨年6月のBREXIT以来、欧州情勢は一変、ドイツと並ぶEU盟主の双璧フランスでFNのマリーヌ・ルペン党首(48歳)が来る5/7に行われる仏大統領選決選投票への進出を決めました。ルペン女史の得票率は中道派マクロン氏(39歳)(得票率23.9%)に次いで21.4%、2012年の前回からFNは20%も得票率を増やしています。1958年から続く「第5共和政」で初めて社会党共和党の2大政党が歴史的敗退を喫し、マイノリティ2人が決選投票に駒を進めたことは驚嘆すべき出来事です。投資銀行ロスチャイルド出身のマクロン氏は前経済相でこそあれ、選挙で選出された経験はありません。トランプ大統領とある意味、バックグラウンドが似ています。

第1回投票前夜のNHKスペシャル「激震トランプ時代第2集」のサブタイトルは<炎上ヨーロッパ〜広がる自国第一主義>でした。まさにその通りの展開となりました。ユーロ紙幣が導入されたのは2002年1月1日のこと、ハードカレンシーユーロの導入の準備段階だった時期に仏パリバ証券に在籍していたので、当時の熱狂ぶりは記憶に焼き付いています。紙幣にはヨーロッパに無数に存在する橋や門をイメージした架空の絵柄が様々な建築様式を以てあしらわれています。歴史上の人物を配して特定の加盟国を喚起させないためです。あの国民的熱狂がわずか15年で反EUに傾くとは当時の誰が予想したでしょうか。

再選を断念したオランド大統領はいち早くマクロン氏支持を表明、敗れた共和党中道右派フィヨン氏も政権政党社会党のアモン氏もマクロン氏への投票を呼び掛けたといいますから、反ルペン氏で結束が固まるかに見えますが、移民政策や経済政策で敗退陣営と一枚岩になれるかどうかは依然不透明です。

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EU盟主ドイツではメルケル首相が孤高の奮闘、この2年で110万人もの難民を受け容れました。しかし、国内では激増する難民の受け容れ態勢をめぐって市民との軋轢が生じ、難民申請を手助けするボランティアスタッフが不足するなど様々な問題が生じています。ドイツの道を歩くと、各所で「躓きの石(Stolpersteine)」と呼ばれる金色の石を目にします。表面のプレートには、ユダヤ人をはじめナチス・ドイツの犠牲となった方々ひとりひとりの名、出生年月日、強制退去させられた日などが刻まれ、彼らが実際に住んでいた地域に設置されています。自国第一主義民族自決主義がファシズムへと変容していった歴史を忘れまいと1992年に始まったこのプロジェクトは、ドイツ国民の良心の証に他なりません。来る総選挙において、忌まわしき過去を克服して欧州の勝ち組となったドイツ国民の選択が誤らないことを祈らずにはいられません。

もしルペン氏が決選投票で勝利することになれば、間違いなく盟主ドイツやイタリアの反EU派は勢いづくことでしょう。市場は固唾をのんで成り行きを見守っています。