サイパン島玉砕の果てに

http://img.movies.yahoo.co.jp/pict/uploader/c2/4f/337962view003.jpg先週、地方都市に出掛けた折に空き時間が出来たので『太平洋の奇跡〜フォックスと呼ばれた男〜』を観てきました。朝一番の上映に限り入館料は1200円と聞いてニンマリ、おまけに観客もまばらでゆったりと鑑賞することが出来ました。映画の主人公は実在の軍人がモデル、米軍がサイパン島占領を宣した後も戦い続けた大場栄大尉です。戦後65年が経って悲惨な戦争体験が風化しつつある今日、本土防衛の先兵として外地で勇敢に戦った硫黄島の栗林中将(実は大将なのですが)や大場大尉のような指揮官がいた事実も忘却の淵にあるように思えます。平和ボケした日本人特に若い世代には、日米合作の本作のような映画を通じて、故国日本が一億総玉砕を免れ復興を果たすことが出来た蔭に数多くの兵士や民間人の尊い犠牲があることを知って貰いたいと思います。『プライベート・ライアン』に見られるような生々しい戦闘シーンが影を潜めているのは若い観客を意識して制作されたからでしょうか。栗林中将は敵に甚大な損害を与え米軍の本土攻略を遅らせた上で絶命しましたが、大場大尉は47人の兵士を率いてサイパン玉砕宣言後も1年5ヶ月余りジャングルで弾薬も兵糧も尽きた最悪の条件の下ゲリラ戦を展開、最後まで生き抜いて筋を通した末に投降しました。原作は米海兵隊員ドン・ジョーンズ著『タッポーチョ 太平洋の奇跡』(祥伝社黄金文庫)、敵ながらあっぱれと大場大尉を讃える敵兵がいたこともサイパン島における日本軍玉砕の熾烈さを裏付ける証左と云えるでしょう。