『もしドラ』が売れる理由

今朝の新聞広告によればベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』の販売部数が138万部を突破したそうです。少女コミックを思わせる表紙イラストに一度で覚えられそうもない長い書名、その上、現代経営学の第一人者ピーター・ドラッカーの代表作を高校野球の女子マネージャーが読んだらというイフ、平積みされた本を前に無関心を装う方が難しいかも知れません。巷では『もしドラ』と呼ばれ公式ホームページまで誕生しています。ドラッカーの訳書を多数出版しているダイヤモンド社の日本におけるドラッカー本の累計販売部数が400万部余りですから『もしドラ』の本家を凌ぐ爆発的ヒットぶりは誰の目にも明らかです。ふとしたはずみから『マネジメント』と出会った女子マネ川島みなみを中心に平凡な都立高野球部が甲子園を目指すという些かありきたりな内容ですが、随所で『マネジメント』の一節が引用され大方の読者の予想を裏切るようなストーリーが展開します。ドラッカーの教えが部員の心を揺さぶりやがて具体的な成果へと繋がっていくプロセスは読み応え十分です。少年野球の指導者はバイブルにするといいでしょう。金融大資本でマネジメントの一翼を担った自身の経験に照らしてみても大いに参考にすべき点が多いと断言出来ます。例えば、<企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングイノベーションである。>というメッセージはマネジメントに携わる者が絶えず意識すべき課題です。新入部員が増えはじめたとき<市場において目指すべき地位は、最大ではなく最適である。>という見方は野球部が目指す規模について再考を促します。『もしドラ』の野球部マネジメント・チームに学ぶべきは円高に翻弄され規模拡大に走る企業経営者かも知れません。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

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