「ティアーズ・イン・ヘヴン」に誘われて観たドラマ『優しい音楽』

ギターの神様エリック・クラプトンの名曲「ティアーズ・イン・ヘヴン」がサブタイトルになったTVドラマ『優しい音楽~ティアーズ・イン・ヘヴン 天国の君へ』(2022年1月7日・テレビ東京放映)を観て、涙腺が緩んでしまいました。脚本家岡田惠和さんのオリジナル作品かと思いきや、原作者は2019年本屋大賞受賞作『そして、バトンは渡された』で一躍時の人となった瀬尾まいこさんでした。いまだに瀬尾さんの著作を一冊も読んだことはありませんが、俄然、気になる存在になりました。

原作『優しい音楽』が出版されたのは2005年のこと。岡田惠和さんは作品にひと目惚れして爾来脚本を拵えてひそかにドラマ化を切望していたのだそうです。江ノ電極楽寺駅ホームで女子大生・千波(土屋太鳳)が永居タケル(永山絢斗)と出会うところからドラマは始まります。ふたりの会話は噛み合わないまま、小さな造船所の作業員として働くタケルは千波との距離を縮めようと彼女をデートに誘い出します。少しずつふたりが抱える心の傷が明らかになっていきます。クリスマスの日、(サンタの)プレゼントを気に入らない幼いタケルが両親に欲しいモノをおねだりした結果、両親はその買物の帰路、自動車事故に巻き込まれ命を落としてしまいます。一方、千波もバースデーのお祝いをしてくれるはずだった最愛の兄を不慮の事故で喪っています。ふたりは家族の死に深い自責の念を抱き続けながら生きています。千波が自分に急接近してきた真相を知ったタケルはひどく落胆し仕事も手につかなくなりますが、どうしても千波のことを忘れることが出来ません。タケルは、これが最後だと観念して千波とご両親が待つ自宅を訪れ、思いも寄らぬ提案をします。

作品世界に通奏低音として流れるのは「ティアーズ・イン・ヘヴン」。この曲はエリック・クラプトンが不慮の事故死を遂げた最愛の息子コナー君(当時4歳)のために捧げたものです。切々と胸を打つ歌詞が劇中の台詞とシンクロして涙を誘います。「ティアーズ・イン・ヘヴン」にインスパイアされてこんな珠玉の作品世界を紡ぎだしてしまう瀬尾まいこさんの感性に脱帽です。

I must be strong つよくならなきゃ

And carry on 頑張って生きていかなきゃ

'Cause I know I don't belong だって・・・僕は天国に行けるような人間じゃないのだから

Here in Heaven