小田代ヶ原の覆水と「草原の貴婦人」

台風24号(9月30日~10月1日)による大雨は各地に甚大な被害をもたらしました。奥日光中禅寺湖でも水位が相当上がり、華厳の滝の落水量は平年毎秒1トン前後なのに、台風以降は中禅寺ダムで毎秒4トンに増やしているのだそうです。台風直後の放水に至っては55トンに達したのだとか。もちろん、過去に例がないことです。湿原にも思わぬ異変が!普段は水を湛えていない小田代ヶ原に2011年以来7年ぶりに<小田代湖>が現れたのです。局地的な豪雨のあとに一時的に湖沼が出現することが過去にもあったようですが、10月中旬になっても水が引く気配はありません。幻の湖をひと目見ようと、奥日光に足を運びました。

しゃくなげ橋からフラットな小田代歩道を歩くとミズナラの樹林帯が拡がります。木洩れ陽を浴びて進むこと1.5キロ余り、秋色深まるこの時期の森林浴は最高です。やがてカラマツの森が現れ、小田代ヶ原展望台に到着です。

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小田代ヶ原といえば、「草原の貴婦人」。展望台の真正面に佇立する1本のシラカバが湖水面に映り込んで、手前のモザイク状にグラデーションされた草原と美しいコントラストを織り成していました。

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周囲2キロに及ぶ小田代ヶ原は、戦場ヶ原の西側に位置し、湿原から草原に移行する段階にある稀少な自然景観です。この日は、トビが一羽悠々と草原を旋回し、望遠レンズで「草原の貴婦人」とのツーショットを捉えることに成功、台風24号がもたらした思わぬ副産物に心から感謝した奥日光の秋の一日でした。

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