2015年は戦後70年の節目の年ということでメディアはこぞって特番を組みました。なかでも、NHKの「一番電車が走った」が秀作で殊のほか記憶に残っています。例年、終戦記念日が近づくとジブリの「火垂るの墓」や「私は貝になりたい」といった戦争をテーマにした映画が放映されます。戦争の記憶を風化させないためにも、こうした企画はこれからも継続しないといけませんね。
ただ、若い世代に戦争の惨劇を伝えるだけではなく、生き残った日本人が焦土と化した国土で戦後復興にどう挑んだかを伝える努力も惜しむべきはないと思います。その点、原爆投下から僅か3日後に広島電鉄が路面電車の営業を再開したという逸話に取材した「一番電車が走った」は、過酷な現実から立ち上がろうとする電鉄職員(特に十代の少女運転士や車掌)の生き様を描いています。実際に原爆投下直後に路面電車が走っているフィルムも流れます。米軍が撮影したものだそうです。
その被爆地ヒロシマを米大統領が訪れる可能性が現実味を帯びてきました。「核なき世界」を訴えたオバマ大統領にそ、伊勢志摩サミットの機会に米大統領初となる被爆地訪問を是非とも実現して欲しいものです。ケネディ駐日大使に続いて、米閣僚としてケリー国務高官が初めてヒロシマを訪れ広島平和記念資料館(原爆資料館)を視察しました。”gut-wrenching”はらわたがえぐられるようだという言葉を残し、オバマ大統領の被爆地訪問を促しました。
昨年3月、自分も初めて原爆資料館を訪ね言葉を失いました。過半数の米国国民が「原爆は悲惨な戦争を終結させるために必要な手段だった(被爆者以上の命が救われた)」と考えているという事実を非難する気はありません。今さら、米大統領が原爆投下を謝罪する必要もないでしょう。献花外交は政治家のパフォーマンスに過ぎませんからこれまた不要です。
被爆地を訪れることで米大統領が肌で核の恐怖を感じて欲しい、ただそれだけです。きっと自然に黙禱することになるのではないでしょうか。70年間草木さえ生えないと云われたヒロシマが今あるのは復興に挑んだ市井の人々の弛まぬ努力の賜物、市民の声にも耳を傾けてくれることを期待しています。
チンチン電車と女学生 1945年8月6日・ヒロシマ (講談社文庫)
- 作者: 堀川惠子,小笠原信之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/06/12
- メディア: 文庫
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