鷹番に用事があったついでに、柿の木坂のコノサーズ・コレクション東京に立ち寄ってみることに。以前、こちらでルドゥーテの『バラ図譜』オクタヴォ判2枚(オリジナル)を購入したことがあって、久しぶりに店主に会えたらと思い訪れました。かれこれ10年ぶり位になるでしょうか。
店の奥の壁には所狭しと額装されたルドゥーテの作品が並んでいました。いずれも原画ではなく、ジクレー版画ということでした。今年5月、東京フォーラムアートショップでメイプルソープ作品展を見て、販売用のジクレー版画の出来栄えに驚いたことを思い出しました。
ジクレーとはフランス語で「吹き付け」を意味します。というとその辺のプリンターで印刷された安っぽい代物を想像しますが、コンピューターに取り込まれた画像は秒間数百万以上のミクロ粒子でジェット噴射されるため、現在、原画に最も近い版画制作技法だと云われています。
店主曰く、オリジナル購入者にはサービスでジクレー版画をお渡しするのだとか。オリジナルは紫外線に弱いので時々共箱から出して見るくらいにして、代わりに原画と遜色のないジクレー版画を壁に架けるようにお薦めしているそうです。従来の複製画では再現できなかった凹凸感や微妙な色調が鑑賞できるとあれば、ジクレー版画で十分なのかも知れません。ただし、ジクレー版画という呼称はやはり原画に近い印象を与えかねないので、ジクレー複製画と銘打つべきではないかとか思います。メイプルソープのジクレーは随分高価でしたからね。
我が家のルドゥーテは、直射日光に晒されないような場所を選んで架けたつもりでしたが、紫外線の影響で購入時より色褪せたように思います。ジクレー版画の登場を待って買えば良かった・・・後悔先に立たずです。
我が国屈指のルドゥーテ蒐集家であり、Bunkamuraザ・ミュージアムで数々の展覧会の企画に携わってきた奥延哲也氏、突然の訪問にもかかわらず、最近ドイツのコレクターから落札したばかりというオクタヴォ判全点を惜しげもなくご披露してくれました。眼福の極みでした。
2時間あまり、意気軒昂な奥延氏から貴重なレクチュアを受け、ルドゥーテの理解が一層深まった気がします。故スティーブ・ジョブズがルドゥーテのバラに魅せられ蒐集していたとは初耳でした。近い将来、実現させたいというルドゥーテ展の構想には吃驚、口止めされたので詳しくはブログに書きませんが、ルドゥーテの伝記の書き換えを迫る企画になるかも知れません。
- 作者: ピエール=ジョセフ・ルドゥーテ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/12/14
- メディア: 大型本
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