お伊勢参りと「せんぐう館」見学

伊勢神宮を参拝したのは小学生の頃だったでしょうか。お伊勢参りをしたと云っても、清冽な印象の残る五十鈴川と名物赤福もち位しか定かな記憶がありません。来年は20年に一度の式年遷宮(62回目)の年、「伊勢に七たび、熊野へ三たび、愛宕参りは月まいり」とも云いますので、この三連休を利用して数十年ぶりにお伊勢参りに出掛けました。

伊勢神宮といえば一般に天照大御神をおまつりする内宮と豊受大御神をおまつりする外宮の2つの正宮を思い浮かべますが、別宮に摂社・末社を加えた125のお宮・お社も伊勢神宮に他なりません。正式名称は「神宮」、まさに神社本庁の本宗です。

連れの家内も、小学生の時分、お伊勢参りをして以来でした。外宮を参拝した記憶はないと云います。お伊勢参りは外宮詣でをしてから内宮へ向かうのが習わしです。外宮と内宮は距離にして約5キロ、車で10分程掛かりますので、家内のように外宮参拝を省略する参拝客も多いようですが、外宮参拝はやはり欠かすべきではないと思います。今年4月、外宮の敷地内には「せんぐう館」という素晴らしい博物館も誕生していますので、外宮参拝と併せ「せんぐう館」の拝観がお薦めです。

「せんぐう館」に入ると、先ず、200インチの巨大スクリーンに映し出された映像を通じて、式年遷宮に纏わる様々な神事の背景や実際を窺い知ることができます。その上、「せんぐう館」内には、外宮参拝の際、遠目でしか捉えることのできない正殿の原寸大模型が設置されていますので、ガイドの説明を聞きながら、持統天皇の時代から1300年あまり脈々と継承されてきた遷宮制度全体の理解を深めることができます。葺かれる萱には麦ワラや稲ワラではなくススキが使われることを知りました。明治時代、財政上の理由から木戸孝允が茅葺を瓦葺に改めるよう奏上したこともあるそうですが、明治天皇は拒否されたとか。

一見経済合理性に反するかに映る20年毎の式年遷宮には、匠の技の承継という直接的な理由のほかに、農耕民族である我々日本人の先祖の五穀豊穣に対する敬虔な祈り(大神嘗祭)や国家の平安発展への願いが込められているように思います。社殿や神宝を新調するだけではなく宇治橋さえ架け替えてしまう式年遷宮には、途轍もない歴史の重みが刻まれているのです。