JR誕生から30年〜3島会社の経営が気懸りです〜

国鉄が分割民営化されてから30年も経ったのかと思うと感慨無量です。直近の2015年度連結決算でJR7社の経常黒字は約1.1兆円、この数字だけ見ると、毎年巨額の赤字を垂れ流していた旧国鉄の解体・民営化は大成功だったように思えます。総社員数もJR発足時の3分の1に相当する13万人ですから、経営の効率化も図られた格好です。

ところが、その実態は本州3社が黒字を牽引し、その他4社(JR貨物を除く俗称3島会社)は後塵を拝しているに過ぎません。同時期に民営化された電電公社(現NTT)や専売公社(現JT)と異なり、国鉄だけが地域ごとに分割されてしまいました。往時、50万人もの組合員を抱えた最大労組国労の解体が時の政府の狙いでした。国労が支えた総評もやがて力を喪い、「昭和」に終焉が訪れます。今や、死語と化した「三公社五現業」は国有林野事業を除いて民営化または独法化されてしまいました。80年代まで霞が関でしばしば見られたデモ行進も姿を消しました。


割を食ったのは人口の少ない北海道と四国を営業基盤とするJR北海道(16年度赤字予想額160億円)とJR四国(同赤字予想額32億円)です。不動産事業で収益を確保するJR九州こそ昨年10月上場しましたが、熊本地震の影響も災いして本業の鉄道事業は決して順調ではありません(鉄道事業は赤字で固都税も上場したあとも軽減されています)。一方、民営化で関連事業進出を制限されなくなった本州3社は、「駅ナカ」ビジネスや駅ビル再開発で荒稼ぎ、まるで不動産デベロッパーのようです。「本業」軽視の姿勢が見て取れなくもありません。JR西日本管内で起きた2005年の宝塚線脱線事故(死亡者107人)の原因も効率化重視の弊害だと指摘されています。

廃線とは無縁の首都圏住人には、過疎地域で公共交通機関が突然消える衝撃を想像することすらできないでしょう。北海道では財政状況が厳しいので自治体も廃線の危機に手を差し伸べることができません。全路線の半数の10路線13区間が自力で維持できないといいますから極めて深刻な状況です。本来JR貨物が負担すべき費用をJR北海道が肩代わりしていることが赤字の拡大に直結しています。大胆な運賃改定も視野に入れた上で、今さらJR6社の経営統合は無理だとしても、もとは国鉄、本州3社が稼ぎ出した収益の一部を離島3社の赤字補てんに充当する仕組みができないものかと思ったりもします。

JRが国鉄から引き継いだ鉄路は2万1189キロ、今も2万117キロが維持されているそうです。鉄ちゃんならずとも、旅愁を誘うのは間違いなく鉄路。過疎地でこそ生活基盤の社会インフラは守ってあげたい、さもなくば首都圏からの客足は途絶え観光資源すら根こそぎ奪われてしまうことでしょう。鉄ちゃんを自負する石破前地方創生相や民進党の前原元国交相らが超党派でいい知恵を出してくれることを願ってやみません。