性格温厚なニホンミツバチの逆襲「熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)」

クマバチを取り上げたついでにもう少し蜂について触れておきます。以前、井の頭公園を縦断する公園通りを自転車で走っていたとき、蜂の群れに追っかけられたことがあります。狙われたのは頭部だったので整髪剤に反応したのではないかと推測しています。嗅覚の発達した蜂は匂いに敏感だと云われます。香水をはじめ蜂が反応しやすい匂いを身にまとう場合には注意が必要です。同様に蜂の視覚も侮れません。特に黒い色を攻撃する習性があるようです。アウトドアライフ全般において蜂やアブを寄せつけないようにするには、黒や濃い目の色は避けた方が良さそうです。愛用のザックが黒基調のヘザー(heather)なので、色違いの同型モデルを揃えておこうと思っているところです。

蜂といってもすべての蜂が攻撃してくるわけではありません。スズメバチアシナガバチは警戒してもミツバチなら安全だと思っていませんか。一般的には、ミツバチは体が小さく見た目も可愛らしいので、確かに過度に警戒する必要はありません。

そんな性格温厚なミツバチの在来種・ニホンミツバチには驚くべき生態があります。ニホンミツバチは、天敵のオオスズメバチが巣を襲ってきたら、球のようになって集団で外敵を取り囲み、蒸し殺す戦法に出ます。ニホンミツバチの集団が胸の筋肉を震わせて熱を発すると中心部は50℃近くまで上昇します。働き蜂の寿命は30日ですから、天敵に対して命懸けの反撃を仕掛けるわけです。名づけて「熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)」。写真・下はこうした生態メカニズムを初めて報告された小野正人玉川大学教授が撮影されたものです。小野教授ら研究グループは「熱殺蜂球」を形成したニホンミツバチの脳内で神経興奮が起きている領野(高次中枢キノコ体)を突き止めています。

パーフェクトフードと呼ばれるハチミツが作られる過程にもミツバチの驚くべき行動が潜んでいます。蜜源を見つけてきたミツバチは巣に戻って独特の8の字ダンスを披露し蜜源のありかを仲間に知らせるのだそうです。セイヨウミツバチの場合は、レンゲやアカシアなど1種類の蜜源に集中して蜜を集めるため、集めた蜜は「単花蜜」と呼ばれます。一方、ニホンミツバチはたくさんの花々の蜜を集めてくるため「百花蜜」と称されます。

ニホンミツバチは謂わば名ブレンダ―。ミネラル含有量が高い「百花蜜」を集めるだけでなく、巣内の風で水分を飛ばし、唾液を混ぜて糖度を上げるニホンミツバチの行動は自然界の驚異そのものです。