九州遠征登山(後篇)|阿蘇五岳の末っ子・根子岳(下山は慎重の上にも慎重に!)

九州遠征の最終日(3日目)は移動日。夕方には熊本空港で帰りの便に搭乗しなくてはなりません。残された行動時間を考えると、ターゲットは阿蘇五岳の最古参・根子岳しかありません。早朝から渋滞に巻き込まれ、熊本市内中心部のホテルから大戸屋根登山口までクルマで2時間もかかりました。

前日、閉館間際の南阿蘇ビジターセンターに飛び込んだところ、女性スタッフTさんが快く迎えてくれました。センター長の橋本一郎さんから分かりづらい根子岳登山口へのルート(大戸屋根コース)を懇切丁寧に教えて頂いたお蔭で、登山口までの移動という翌日一番の不安材料を払拭できました。あわせて、設置された双眼鏡で登山口駐車場や天狗岩の様子をつぶさに確認しておきました。天狗岩の岩肌が一部白く露出して見えるのは、2016年4月の熊本地震で壁面が一部崩落したからだそうです。最高点の天狗岳(1433m)は険しい岩峰で崩落の危険もあるため、現在、立ち入り禁止になっています。写真(下)は阿蘇五岳のビュースポット・月廻り公園から撮影したものです。

遠方から根子岳東峰をめざすなら、正面に根子岳を望む好立地の南阿蘇ビジターセンターで事前に情報収集しておくことをお勧めします。北側の大観峰から眺めると、「涅槃像」(写真・下:阿蘇市観光協会HP提供)に例えられる阿蘇五岳の頭部が根子岳にあたります。ギザギザした姿が猫のようなので転じて根子岳になったとも言われます。地質調査から、根子岳カルデラが形成される前から存在した阿蘇五岳のなかで最も古い時代の火山(15万年前)だと推定されています。神話では阿蘇五岳の末っ子ながら、根子岳は最古参の存在なのです。

大戸屋根登山口へ迷わず行くには、ナビに上色見熊野座(かみしきみくまのいます)神社を登録しておくことです。そこからは南阿蘇ビジターセンターで入手した写真入りルートマップが頼りです。何とか第2駐車場にたどりつくことができました。地元の方の好意で提供されている駐車スぺ―スなのでトイレはありません。

白く塗装された道路は近隣の牧場のために整備されたものなのでしょうか。牛舎を覗くと赤牛が一斉にこちらを向くので目の遣り場に困りました。駐車場から来た道を少し引き返し、白い道路をしばらく進むと鎖でガードされたゲートがあるので、左右の鎖を外してまっすぐ進みます(ゲートは再び閉じて鎖掛けしておきます)。右手に記帳所が見えたらその前を通って牧草地へ。その先にある鉄格子が正真正銘の登山口です。傾いた丸太や鉄パイプに括りつけられた標識に根子岳(へ)と書かれています。一筋縄ではいかない登山口までのアプローチはこれにて終了です。ヤレヤレ・・・

登山口から山頂まで約1時間です。上り20分くらいからロープ設置ヵ所が次々と現れます。とても滑りやすい黒い火山灰土が行く手を阻みます。ポールに頼らず、補助的にロープに掴まった方がいい箇所がずいぶんありました。樹林帯を進むと岩場が現れ、矢印の先に1ヵ所梯子があります。山頂近くまで進むと左手に天狗岩が屹立しています。東峰・山頂(1408m)に着いたのは11時過ぎ。それほど広いスペースではありません。男性がひとり天狗岩の方を向いて着替え中だったので、逆方向に陣取ってひと息入れました。ハエが集って少々不愉快でしたが、天気も上々なのでカップ麺を頬張りながら1時間滞在しました。

先週末、阿蘇山一帯が終日雨だったことも手伝って、粘土質の急坂は想像以上に滑りやすくなっていました。慎重に下ったつもりでしたが、2度スリップし左大腿部を打撲しました。ソールのグリップ力を最大限発揮できるように下り方はひと工夫必要です。行動時間こそ短かったものの、下山で神経をすり減らした最終日の根子岳が最も厄介で手強い相手でした。