「年賀状じまい」に思う

小学校時代の恩師・N先生から年賀状が届いたのは松の内を過ぎてから。お身体が心配になった矢先、賀状が届いてホッとしたところです。<私は卒寿 体が動きません>と記された手書きメッセージを拝読したあと、印刷された定型文に目を落とすとこんな一文が。

<誠に勝手ながら本年をもちまして新年のご挨拶は最後とさせて頂きます>

印刷文だけにうっかりスル―するところでした。一抹の淋しさを覚えましたが、ご高齢の恩師の負担を思えば致し方ないことです。N先生は当時20代の女性教員(後に校長を歴任されます)でしたが、従容とした態度で生徒と接するのでクラスの雰囲気はとても良かった記憶があります。始業前に長いときは15分~20分間、身の周りのさまざまな出来事を話して下さったのが今も記憶に鮮やかです。振り返れば、50年以上にわたって恩師と年賀状の遣り取りを重ねてきたことになります。早速、寒中見舞いのはがきを差し上げることにしました。

紙の消費を減らすことは社会貢献のひとつ。数年前、SDGsの観点から「年賀状じまい」を検討したこともありますが、結局、見送りました。ここ数年、後輩からもチラホラ「年賀状じまい」が届くようになりました。年賀状を出す人が激減していることは統計を見れば一目瞭然です。日本郵便によれば、ピーク時の2004年の当初年賀状発行枚数は約44億枚で2023年用は16億枚ですから、この20年弱で6割超も減った計算です。

忙しい歳末に年賀状を作成するのが煩わしい・・・と感じている人が多いのでしょう。一方、便利な年賀状ソフトを使えば、面倒な宛名書きから解放されるだけでなく、自在に本文をレイアウトして印刷まで手軽に済ませることができます。我が家では、短時間でオリジナル賀状を作成できるというメリットを最大限享受しています。いまだにお仕着せの年賀状に頼る人が「年賀状じまい」の有力な予備軍なのでしょう。

虚礼廃止で企業の賀状は一掃で構いません。個人の場合もよくよく考えてみれば、年賀状が唯一のコミニケ―ション手段というケースが圧倒的に多いのではないでしょうか。日本郵便の「スマートねんが」へ移行する手もあります。そうは云っても、元旦に束になって届く賀状にお屠蘇気分で目を通す習わしはお正月の愉しみのひとつ。「継続は力なり」と信じて最期まで年賀状とお付き合いすることにしましょうか。