カタールW杯と日本人の現地観戦

グループステージ3戦目で日本代表が強豪スペインを2-1の逆転勝利で下し決勝トーナメントに駒を進めました。ドイツ戦の再現かと思わせる後半の猛チャージは、正直、驚きの連続でした。VAR判定にもつれ込んだ三笘の折り返しは語り継がれる名アシストになることでしょう。ドイツ戦同様、前半と後半の戦い方があまりにも対照的でいまだに整理がつかないくらいです(本当に同じ日本代表?)が、クロアチア戦の負けから見事に切り替えてみせた日本代表は誠に天晴です。

これだけドラマティックな逆転劇を見せつけられると、現地観戦しなかったことが本当に悔やまれます・・・。現地に駆けつけたサポーター諸氏のW杯にかける熱意と周到な準備に敬服するしかありません。

日本代表GS初戦のテレビ観戦中、観客席の若い男性サポーター(日本人でした!)が掲げた一枚の紙片をカメラが捉え、ハッとさせられました。紙片にこう書かれていたからです。

“Dear My BOSS Thank you For MY 2 WEEK OFF”

2週間の休暇を認めてくれた上司への感謝の気持ちがストレートに伝わってくるメッセ―ジ。すると、テレビカメラが捉えた一瞬をFIFATwitter公式アカウントが投稿して、「この言葉をすべての上司に贈ります」とコメントを添えたのです。FIFAもなかなか心憎い演出をするものです。

英語の紙片を掲げたくだんの青年を自分はてっきり外資系企業に勤めるサラリーマンだと思っていました。ところが、FIFAのツイートに反応した日本企業が現れたのです。しかも、こんな粋な返事を同社の公式アカウントに添えて!

“Please enjoy your vacation and the World Cup!From your boss “

「どうか休暇とワールドカップを楽しんで下さい!ボスより」

これで、青年の勤務先がNTT東日本だと判明しました。巷では就活生の間で密かにブラック企業の選定がなされています。これに対して、NTT東日本は今回の粋な取り計らいで大いに株を上げました。就活生なら理想のホワイト企業だと断言するでしょう。直属の女性上司は「こうした休暇の使い方が仕事にプラスに働く」と応えていましたが、まったく同感です。<よく遊べ、そしてよく働け(学べ)>の精神です。来年の同社の就職人気度ランキングはきっとうなぎ登りでしょう。

日本では、上司の顔色を窺いながらおずおずと休暇申請を願い出るサラリーマンやOLばかりかと思っていましたが、カタールW杯に出場した日本代表のように堂々と個を主張する若者が増えているのはとてもいいことです。20代30代のうちに、日本人は2週間くらいまとめて休暇(これを長期休暇と思っているようではまだまだ時代遅れです)を取得して海外でもっと見聞を広めるべきだと思っています。そうすれば、閉塞感の強い日本経済もきっと立ち直るきっかけを掴めることでしょう。あくまで、ワーク・ライフ・バランスではなくライフ・ワーク・バランスであるべきなのです。