プライバシーより「知る権利」に奉仕する<新・破産者マップ>

9月6日付け朝日新聞朝刊社会面の<破産者DB 無断で続々>という見出しに目が釘付けになりました。国が発行する唯一の法令交付機関紙「官報」には、政令や告示、省庁の人事異動だけでなく、裁判所が関与する事項も公告されます。市民生活に直接関わりなさそうに見える「官報」は、相続・公示催告・失踪・破産等、個人の機微情報も掲載しているのです。

破産者の氏名や住所が官報に掲載されるのは、債権者リストから漏れた債権者にその事実を知らしめ、債権者間で公平かつ平等な分配を確保するためです。「官報」掲載が破産者の健全な再生を妨げているという批判がありますが、インターネットで閲覧できるようになったからといって「官報」は依然として一般市民にとって縁遠い存在です。購読している人がいるとすればかなり奇特な人でしょう。

ところが、過去の「官報」情報をもとに作成された破産者のデータベース(DB)が存在するとなれば、状況は一変します。<破産者マップ>と呼ばれるDBの提供は明らかに違法な行為です。政府の個人情報保護委員会が破産者の同意なき公開は罷りならぬとサービス停止を命じても、すぐに別のサイトがゾンビのように登場し、いたちごっこのようです。朝日新聞が取り上げたサイトは、さしずめ<新・破産者マップ>なのでしょう。

Google Map上の破産者の住所地に青いピンが立てられていて、クリックすると、(多くは同時廃止の)日付、破産者の住所、氏名が表示されます。削除するには、運営者に上記に従ってビットコイン(6万円又は12万円)を支払う必要があります。プライバシーを逆手にとった悪質なビジネスですが、破産者にしてみれば、痛い急所を突かれた格好です。弁護士向けの専用窓口もあるくらいですから、お金で解決を希望する人も少なからずいるのでしょう。

現代の高度な情報社会においては、犯罪歴然り、一度押された負の烙印を拭い去ることは至難の業だと心得ておくべきです。警察や裁判所のお世話にならないように、平穏な市民生活を送ることが個人情報を守る最良の方策なのです。