「結婚」の語釈〜『持続可能な恋ですか?』最終話より〜

上野樹里さん主演のTBSドラマ『持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~』の最終話を視聴しました。最近の恋愛ドラマとは一線を画した味わい深い結末に心揺さぶられました。樹里さん演じる杏花さんの父親・林太郎(松重豊)は、辞書編纂を生業とするフリーの日本語学者。妻に先立たれた林太郎は、適齢期のひとり娘・杏花とマンションで2人暮らしという境遇。生活力を欠く自分のために娘の婚期が遅れているのだと自覚する林太郎は、娘の結婚を後押ししようと結婚相談所を訪れ、ふたりの奇妙なダブル婚活が始まります。

予定調和のハッピーエンドもさることながら、注目すべきは日本語オタクの林太郎。街で新しい言葉に出会うたびに嬉々として一眼レフで撮影したりメモを取ったりします。聞き耳を立てられた女子高生が不気味がるのも無理はありません。2012年に本屋大賞に選ばれた三浦しをんさんの『舟を編む』の主人公馬締君と重ね合わせながら見ていました。老境を迎えつつある林太郎が言葉と格闘する姿はとてもエネルギッシュでチャーミングそのものでした。

杏花と林太郎が最終的に選択した結婚は、バツイチ子連れ男性晴太(田中圭)との結婚であり、整形外科医・日向明里(井川遥)との年の差婚でした。ハンディを背負ったふたりの男性は、好きな相手に本音をぶつけることが出来ず、彼女らの人並みの幸せを願って一旦は身を引く決意をします。最終回、そんな紆余曲折の末にたどり着いた「結婚」に、こんな素敵な語釈が与えられます。林太郎の職業人としての真価が見事に発揮された瞬間です。

「結婚とは愛し合う他人同士が分かり合いたいと願い、共に年を重ね、互いの変化を慈しみ、それでもなお分かり合えないことを知る営み。古来、人類が繰り返してきた永遠に続く愛情への無茶な挑戦」

(無茶で)無謀な挑戦・・・少し長い気もしますが、結婚の本質を見事にたぐり寄せた脚本家の手腕に脱帽です。