2021年師走の御岳山・大岳山・鋸山縦走~JR御嶽駅から奥多摩駅へ~

檜原村奥多摩町の境界、奥多摩山域にある大岳山(おおたけさん)をめざして初冬の縦走にチャレンジしました。今回の山行は本格的な登山が2回目となるYさんのために計画したものです。Yさんに登山を勧めた手前、ガイド役を引き受けざるを得なくなった恰好です。自分の周りには、登山やトレッキングをしたいと思いながらなかなか一歩を踏み出せないでいる人が相当数います。理由はふたつあるように思います。登山を始めるにあたって、先ず「三種の神器」すなわち「登山靴」、「リュック(バックパック)」、そして「レインウエア」を買い揃える必要があります。さらにウェアなど最低限のギア(装備)を含めれば、少なく見積もっても10万円前後の出費になります。ひとつめは経済的な問題です。次に来るのは、<何をどこで買ったらいいのか分からない>というのが本音ではないでしょうか。Yさんのように腹を括って基本装備を揃えてしまえば、元を取らないといけませんから、自ずとモチベーションが上がるというわけです。

今回の山行は距離にして約12km、コースタイムは6時間5分です。登山を始めたばかりのYさんにはかなりタフな行程です。JR御嶽駅から京王バスでケーブル下滝本駅まで移動、ケーブルカーに6分乗車して一気に426m標高を稼ぎます。従って、登山の起点はケーブル御岳山駅ということになります。ところが、初っ端から予期せぬアクシデントに見舞われ、登山開始が予定より43分も遅くなってしまいました。青梅駅における乗り継ぎが車両トラブルの影響で大幅に遅れたことが原因です。我々も含めた大勢の登山者が思わぬアクシデントに動揺したことは間違いありません。冬至を目前にしたこの日の日没は16時28分、下手をすれば日没後の下山を覚悟しなければなりません。40分余りの遅れを取り戻すのは容易ではないだけに、大岳山登頂後、ロックガーデン経由御岳山方面に引き返すプランBが頭を過りました。

御岳山で安全祈願を済ませ、参道階段中腹を左手へ進み奥の院(写真右上)をめざします。Yさんにはなかなか険しい上りでしたが、奥の院手前の鎖場を無事通過、2時間足らずで鍋割山(1084m)にたどり着きました。ハイペースに加え頂上直下の鎖場や岩場にへこたれなかったYさんの頑張りのお蔭で、大岳山(1266m)山頂に予定より13分も早く到着できました。この日は風もなく視界は良好、山頂標識背後に雪化粧した富士山や丹沢山塊が望めました。大岳山に限らず、山頂で富士山が見えると誰しも忽ちテンションが上がります。Yさんには最高のご褒美でした。12時30分過ぎ、山頂でカップ麺ランチ、食後にドリップ珈琲を頂きました。山頂にいたパーティは自分たちを含めわずか5組、登山者がぐっと減って山頂をほぼ独り占めできるのがオフシーズン登山の利点なのです。

順調に来たのでプランAを続行、ここからいよいよ日没との競争です。後続の登山者は皆無、大岳山から鋸山(1109m)へとアップダウンを繰り返しながら尾根歩き。鋸山山頂で一休みして西に向かって鋸尾根を下ります。15時を回ると一気に陽が傾いてきます。途中、鉄梯子や鎖場もあるので気を抜けませんが、実に心地のいい尾根歩きでした。大天狗・小天狗の石像が祀られた祠周辺まで来ると視界が開け、奥多摩三山のひとつ、御前山(ごぜんやま・1405m)が望めました。そこからは加速度的に高度を下げていきます。単調な下りを辛抱し愛宕山(507m)から188段の急な石段を下れば、登計園地ふれあい広場です。Yさんは時間をかけて慎重に石段を下って広場で追いついてくれました。エレベーターを使わないで自宅マンション7階とエントランス間を昇降するトレーニングに勤しんだ結果でしょうか、最後の難所もクリアしてくれました。

16時45分、昭和橋を渡ってゴールのJR奥多摩駅に到着。16時52分発の青梅駅行きに乗車すると、とっぷり日が暮れて車窓からはポツリポツリと人家の明りが見えます。山間を縫って、電車で20分足らずのJR御嶽駅奥多摩駅間を7時間かけて踏破した計算です。Yさん、本当にお疲れ様でした!