イマドキの婚姻届事情~自治体が発行するオリジナル「婚姻届」や「婚姻受理証明」とは?~

ミレニアル世代の息子たちが結婚適齢期を迎え、とうとう次男が来月にも「入籍」の運びとなりました。高齢少子化社会にあって、家族が増えることはもとより大歓迎なので素直に慶事と受け止めています。

婚姻届の提出場所は日本全国どこの役所でもOKということになっています。旅行先など居住地以外の場所でも構わないという鷹揚さにはお役所仕事らしからぬ意外感があります。しかも、いつ出しても良いのです。冒頭で「入籍」という言葉を使いましたが、よくよく考えてみると違和感を覚えます。婚姻届を提出することによって、双方の親の戸籍から新郎・新婦が分離されあらたに戸籍が設けられるわけですから、「創籍」と称した方が理に適っています。気鋭の文芸批評家の斎藤美奈子は『冠婚葬祭のひみつ』(2008年刊・岩波新書)のなかで、<勘違いしちゃいけないのは、あくまでの二人の新しい戸籍を「つくる」のであって、一方が一方の戸籍(家)に吸収合併されるわけではないってことだ。明治民法下の結婚じゃないんだから、「入籍」という言葉を使うのは、そろそろやめろと申し上げたい>と強い調子で憤りを露わにしています。

多忙な息子に代わって、両家顔合わせ食事会の栞を作りながら、「今後の予定 2021年12月 入籍」とPC入力している最中にふと斎藤美奈子女史の指摘を思い出したというわけです。新婦がバリバリの女権論者だったり、新婦の母が旧い家族観に強い抵抗感を持っていた場合、顔合わせの場でいきなり険悪な空気に包まれていたのかも知れません。幸いにして、こうした事態は避けられましたが、結婚に至るさまざまなセレモニーや結婚制度と昨今の夫婦別姓論議との間には埋め難いギャップがあることに改めて気づかされます。

職業柄、当分、1年から数年単位で転居を繰り返すことになる次男は、我が家の住所地を本籍にすると決めたようです。夫婦別性論者でない自分でさえ、住所と戸籍が併存する現行制度の不便さには閉口しているので、何らかの見直しが必要だと感じています。

新婦は新郎とともに自分たちで婚姻届を役所に提出したいと思っているようです。仮に新郎の本籍地以外の現住所地で届け出をするとなると、新郎や新婦の戸籍謄本や抄本が必要になってきます。戸籍をコンピューター化した自治体では、謄本を「戸籍全部事項証明書」、抄本を「戸籍個人事項証明書」と呼んだりしていて、混乱に拍車をかけています。婚姻数は右肩下がりの一方、婚姻手続きの簡素化が進んでいないのは一目瞭然なのです。

ネガティブな側面ばかりを論いましたが、最近は婚姻届のバリエーションが豊富となり、ご当地仕様の婚姻届やオリジナル「婚姻受理証明書」を発行する自治体が増えているようです。都内では、新宿区、国分寺市羽村市三鷹市がオリジナル「婚姻受理証明書」を発行しています。写真は三鷹市の「婚姻受理証明書」で、市のシンボルキャラクターや名所があしらわれており、証人の名前も記載されるのがユニークな点です。三鷹といえば太宰治、さすがに愛人と入水自殺した太宰治を「婚姻受理証明書」に登場させることは役所も躊躇ったのでしょう。「いい夫婦の日キャンペーン」を展開する東京都のオリジナル「婚姻届」には、東京の街並みを歩く様々な夫婦が描かれています。無味乾燥な自治体HPにも、人口減少を食い止めようと結婚を後押しする創意工夫が随所で見られます。婚姻届提出に役所を訪れるカップルのために、記念撮影用のフォトブースを設ける自治体も散見されます。きっと若い職員がお役所仕事を少しでも改善しようと日々努めているに違いありません。ちょっと見直しました。