奢る人は成功するのか?~人生相談に学ぶ上手なお金の使い方~

悩みごとがあったとしても他人はおろか妻にさえ相談するなどあり得ないと思っています。詰まるところ、解決できるのは自分しかいないと確信しているからです。だからといって、友人知己からの相談を拒むことは一切ありません。むしろ相談を持ち掛けられることが少なくありません。もちろん、親身になって相談に乗っています。

そんな性分なので、新聞やラジオの人生相談コーナーに悩みを打ち明ける人たちの真意を計りかねています。先週、朝日新聞の人生相談欄「なやみのとびら」に70代男性が「若い頃からの倹約生活の癖が治らず、老後も人生を楽しむようなお金の使い方ができません・・・」という趣旨のお悩み相談を持ち掛け、回答者の脚本家中園ミホさんがなかなか気の利いた回答をなさっていました。ありふれた相談内容より、当意即妙の回答に思わずポーンと膝を叩いてしまいました。

中園さんのアドバイスは「自分のためには使えなくても、人のためにはガードを取っ払ってください。もう十分貯金もあるでしょうから、奥様には少しはぜいたくをさせてあげましょう」というものでした。彼女はこう続けます。「(占師をしていた経験上)経営者で成功した人はみなさん、まわりの人たちに気前よくごちそうします。(中略)みなさん口をそろえて<余裕がない頃から、後輩や部下にごちそうするのが好きでした>というのです。誰かを楽しませ、喜ばせるためのお金は惜しまない・そういう人だからこそ成功したのかもしれません」。中園さんと親しい作家の林真理子さんは、後輩やまだ売れない若手俳優さんたちに歌舞伎やミュージカルのチケットをプレゼントし、お芝居がはねたらご馳走を振る舞っているそうです。

振り返ってみると、自分の周りでも確かに太っ腹で気前のいい人間の多くが社会的に成功を収めています。会社勤めよりはフリーランスの職業に就いている人たちの方が気前がいいように思います。年上は奢るべきだという考えを信奉していたので、後輩を指導する立場になった入社3年目頃から、残業で遅くなると、大して給料の違わない後輩たちの飯代は自分が払っていました。結婚したとき、妻が預貯金の少なさに嘆いたのはそのせいです。自分のなかでは、<奢る>という行為は、単に食事代を支払うことではなく、相手方へ気配りすることを意味します。特にこれといった見返りがあったわけではありませんが、30代中盤くらいから、物事の歯車が次第に好転しお金の心配からは解放されました。相手の年齢や性別にかかわらず、楽しい時間を過ごさせてもらってありがとうという感謝の気持ちを相手に伝える手段のひとつが<奢る>という行為なのです。

自分の経験則上も、<奢る人は成功する>という方程式は概ね正しいと思うのです。最近は一期一会の人であっても、大切な人だと思える人にはご馳走したりするようにしています。つい最近も、1年ぶりに会った同級生から手土産にと宿泊先のホテルで手配したと思しきパウンドケーキを貰いました。会食後のさりげない気遣いをとても嬉しく感じたものです。最近はめっきり機会が減ってしまった接待の席ではありますが、かつて、大切なお客様を接待したあと、必ず気の利いた手土産を用意していました。友人知己との久しぶりの会食機会こそ、季節を感じさせる手土産など持参すれば、自然会話が弾みお互い笑顔になれるものです。<奢る>という行為の効用は計り知れないと思うわけです。