歩いて登れない大室山(580m)~富士山と大室山は姉妹の関係~

気象庁は全国48の火山を対象に<噴火警戒レベル>を公表しています。例えば、東京から日帰り圏内にある浅間山は現在レベル2(火口周辺規制)ですから、火口周辺に立ち入れません。噴火警戒レベルは1(活火山であることに留意)でありながら、草津白根山は2018年1月の噴火以降、登山道への立ち入りさえ禁止されています。浅間山草津白根山のような日本百名山であっても、こうした制約はつきものなのです。噴火警戒レベル1でありながら、死者(58人)・行方不明者(5人)含め63人の犠牲者を出した2014年9月の御嶽山の噴火は火山国日本を強く印象づけました。登山者は日本の多くの山々が活火山であることを常に意識してかからねばなりません。

伊豆半島には違った意味で歩いて登れない火山があります。約4000年前の噴火によって形成された大室山(標高580m)は、山全体が国の天然記念物に指定されていて、環境保全の見地から徒歩での登山が禁止されています。従って、低山でありながらリフト(2021年5月2日現在:往復700円)で山頂まで移動することになります。5/2(日)8時30分、現地に到着するとすでに50人ほどの行列ができていました。リフトは9時から営業開始です。2018年に伊豆半島ユネスコ世界ジオパーク(国内9地域)に認定されており、なかでも「伊豆東部火山群」最大級の規模を誇るスコリア丘(きゅう)大室山はジオパークを代表する景観です。噴火口の直径は300m、噴火口の円周約1kmを20分前後で周回(お鉢めぐり)できてしまいます。

この日はお天気に恵まれ、整備された山頂遊歩道を歩きながら圧巻の360度パノラマを堪能しました。南東、城ケ崎海岸の遥か向こうには伊豆大島や利島など伊豆七島が拡がり、北西、山頂標識の先には富士山がはっきりと見えます。大室山は「磐長姫の命」を、富士山は「木花開耶姫の命」を祀っていますので、ふたつの山は姉妹の関係にあります。富士山がきれいに見えたのは姉にあたる大室山のご機嫌が良かったからなのでしょう。

大室山の噴火によって相模湾に大量に流れ込んだ溶岩が波に浸食され、数十メートルの断崖を形成する城ケ崎海岸が生まれたと言われています。高さ23mの門脇吊橋から眺める城ケ崎海岸の景色は見応え十分でした。時間が許せば、海岸線に沿って設けられた「城ケ崎ピクニカルコース(約3km・所要時間1時間30分)を散策するに限ります。