国産ワクチンを開発できない日本は先進国と言えるのか?

先進国と発展途上国はひとり当たりの国民所得(GNI)で線引きされます。直近2018-2020年の境界線は、12235米ドル、円換算(@109円)で133万円でした。日本は、最上位かと思いきや、28位と低位に甘んじています。フランス29位、イギリス30位とG7カントリーが続きます。因みにトップ3は、モナコリヒテンシュタインバミューダです。我が国のこれまでのコロナ禍対応を見るにつけ、国民ひとり当たりの所得低下のみならず、国力の総体的な衰退が気懸りでなりません。

新型コロナウイルスの存在が明らかになって1年3ヶ月。ワクチンの接種率において、日本は米国やドイツなど先進国に周回遅れどころか完全に置いてきぼりを喰らっています。ブルームバーグのワクチントラッカーによれば、米国は集団免疫獲得まで、あと3ヶ月だそうです。日本は接種が始まったばかりですから、3.8年かかると試算されています。ドイツ6ヶ月、韓国が2年弱だと聞かされれば、焦燥感に駆られます。

日本は、人口対比感染者数も死亡者も圧倒的に少ないから、ワクチンは感染者数の多い国に優先的に供給されているのだという説明に耳を傾けてきましたが、ワクチン接種が遅々として進まないのはさすがに行政の怠慢ではないかと思えてきました。

ホワイトハウスを去ったトランプ前大統領は、「ワープ・スピード作戦」と称して、早々と有望ワクチン開発に100億ドル(1兆円)規模の巨額支援を決定。先駆的研究に加え官民連携によって12ヶ月足らずでワクチン開発を成功させ、昨年12月から接種を開始、すでに米国では1億3800万人以上が1回目の接種を終えたといいます。ニューヨーカー曰く、検査はコンビニへ行くような感覚だったそうです。一方、日本は同時期、「GO TO キャンペーン」を打ち出し、予備費、追加補正予算を含め2兆7000億もの巨額予算を計上したのです。

平時から多様なワクチンを確保し、臨床試験の前段階を済ませるという米国のワクチン開発戦略は、兵器開発に匹敵する国家安全保障投資の為せる術と言えそうです。首都東京や大阪で医療崩壊が叫ばれるような国はもはや先進国とは言い難いのです。ワクチン接種で大きく出遅れた日本の消費回復は今年一杯期待薄ではないでしょうか。