『お金の大学』に書き切れていないこと~フィナンシャルリテラシー獲得をめざして~

メルカリで買ったという『お金の大学』(定価1400円+税)と題する本を息子から手渡されました。投資銀行員だった父親の感想を聞きたいようです。著者である両@リベラルアーツ大学学長氏は、高校在学中に起業、20年以上にわたって本業(?)で稼ぎながらリべ大を運営、SNSで熱狂的に支持されているようです。カラフルでイラスト付きの本書は、若い世代には格好のマネーテキストかも知れません。一番感心したのは、人生で最も高価な買い物のひとつ、車や家のリセールバリューに言及していることでした。蛇足になりますが、ベストセラーやハウツー本の類いはメルカリやブックオフで安く買うのが鉄則。息子はひとつ課題クリアしたことになります。

本書は、「生活費<資産所得」という状態を<経済的自由>と定義し、想定読者であるサラリーマンやOLに対して、資産所得(配当&利子所得や不動産所得)や事業所得の獲得をめざせと説いています。前者は昔から存在する伝統的な資産運用による所得、後者は所謂副業に相当します。IT革命によって、ネット環境を縦横に駆使したサイドビジネスには無限の可能性がもたらされ、得意分野で本業以外の収入源を確立することは、間違いなく<経済的自由>獲得への大いなる橋頭保となるでしょう。この場合、<経済的自由>というより<経済的自立>と呼んだ方が適切な気がします。かつて、moonlight jobと揶揄された副業は今や本業に迫る勢いなのです。最近は、日本でも”FIRE”(Financial Independence, Retire Early=経済的に自立した早期退職)が盛んに叫ばれるようになり、米国のようにセミリタイアの目安となる「年間支出の25倍の資産」構築に励む人も着実に増えているような気がします。

その昔、日本人の大半はお金のことについて語ることをはしたないと思っていたはずです。今もかかる風潮がないとは言い切れません。しかし、究極の文明の利器iPhoneや情報収集に欠かせないネット環境を自宅で調えるのに先立つものはお金です。真面目にお金のことを考えることは、21世紀を生きる上で是非とも習慣化したい事柄のひとつだと思うのです。

『お金の大学』でことさら強調していない点や書き切れていない点を補足しておきたいと思います。ビジネスマンの父から息子への10通のショートメッセージだと思ってもらって構いません。

1)「本業はかけがえのない大切なものだと思え」~自分というアセットで稼げる資本要らずの収入源だという認識を持とう~

2)「身体が資本」~本業を継続するために欠かせないものは肉体的・精神的健康です~

3)「お金を増やすことを自己目的化しない」~貯蓄と消費のバランスが大切です~

4)「不労所得とは働かずに得られたお金のことではない」~絶えず社会経済情勢に関する情報収集を怠るな~

5)「予実管理の徹底」~予算と実績をエクセルなので月次管理すべし~

6)「自分の得意分野で副業の可能性を探る」~好きこそものの上手なれ~

7)「少子高齢化が社会に及ぼす影響を常に考える習慣を身につける」~自分なりの未来予想図を描いてみることです~

8)「ブラックスワンは一定の周期で必ず訪れる」~想定外の事態が襲来することを忘れないことです~

9)「人生にとって一番高価な買物は<伴侶>、<家>、<車>の順だと心得よ」~買う前に熟慮が必要です~

10)「安物買いの銭失い」(”Penny wise, and pound foolish”)~長く使えるものにこそ愛着が宿る~

11)番外篇「日本は金利を喪失した国だと心得よ」~金利では暮らせない~