5ヶ月ぶりの歌舞伎座でまさかの休演~8月5日第3部「吉野山」~

8月5日の昨日、歌舞伎座正面左手の絵看板の背後で待ち合わせていた知人ふたりと合流、いざ入場と思いきや、突然第3部『義経千本桜(吉野山)』が休演だと知らされました。半信半疑の思いで掲示板に目を遣ると、舞台関係者に体調不良者が確認されたため、やむなく新型コロナウイルス対策ガイドラインに則って、休演の措置をとったということでした。強行すれば感染被害が拡大する虞もあったわけで当然の措置だったと思います。幸い、8月「花形歌舞伎」は幕間なしの総入れ替え制になったことで、4部は予定通り開演するということでした。入れ替え時に客席や楽屋を消毒するのだそうです。

新歌舞伎座が開場して7年、この間、役者さんの体調不良や事故などで一時的に休演になることは多々ありましたが、自分が休演日に出喰わすことはありませんでした。いざその立場に身を置いてみると、やるせなさは筆舌に尽くし難いものでした。今回は開演まで2時間を切った切羽詰まった段階での発表だったので、殆どのお客さんは現地に出向いて初めて休演を知った恰好です。知人のひとりは、体調を崩して2月公演を断念したこともあって、落胆ぶりは傍目にも気の毒なくらいでした。

5か月ぶりの歌舞伎座公演は、過去前例のない4部制で再開。新型コロナウイルス対策に注力し、謂わばウィズコロナ時代の公演のあり方を模索するトライアルケースでした。客席数1808席は半分以下の823席まで間引かれ、客同士が隣合わせにならないように、市松模様に着席します。桟敷席や一幕見席も販売されません。開幕直前には役者・スタッフ約200人がPCR検査を受けたといいますから、感染対策の徹底ぶりは称賛に値します。

3部「吉野山」で源九郎狐忠信役を務める猿之助さんは、制作発表の席上、こんな決意表明をされています。

<演劇がこの先どうなるかを模索していきたい。その第一歩。役者、スタッフ一同、それぞれ筆舌に尽くしがたい苦労を耐え、生活に必死になり、この日を迎えました。精いっぱいつとめたい>