やむなく損切り~伊藤忠によるファミマTOBの乱~

塩漬け銘柄のひとつ、ファミリーマート株(8028)が連日急騰しています。普段なら糠喜びするところですが、今回ばかりは、やるせない思いが募るばかりです。というのも、ファミマの筆頭株主過半数の50.1%を握る伊藤忠が5800億円を投じ2300円でTOBを実施すると発表したからです。伊藤忠による完全子会社化が実現すれば、当然ファミは上場廃止になるので、株式はTOB期間中の市場売却が鉄則です。

問題はTOB価格。ちなみに塩漬けファミマ200株の取得価額は3565円です。コロナ拡大が本格化する前の3月上旬には株価は2400円前後でしたから、2300円で買ってあげると言われても大半の既存株主は嬉しくもなんともありません。含み損が実現するだからです。コロナ禍で急落した株価水準に30%程度上乗せしたTOB価格は、はっきりいって、現行株主を愚弄するものです。

TOB発表直前の7月8日終値は1754円でしたが、株価は当然の如く急騰、驚くべきは7月16日に高値2473円をつけたことです。市場ではTOB価格に鞘寄せするのが通例ですから、摩訶不思議な相場展開です。17日付け日経朝刊に<賛成でも「価格安い」応募勧めず>と題した記事が掲載され、ようやくTOB価格決定の舞台裏事情が呑み込めました。買い手の伊藤忠はコロナで業績悪化が懸念されるファミマをできるかぎり安く買い叩きたい、一方、一般株主はコロナによる業績低迷は一時的なものと考えますから、両者はもろに利益相反します。

ファミマは買い付け価格の公正を期すため、アドバイザー(メリルと森濱田松本)とは別に独立社外取締役を委員とする特別委員会を設置、委員会はPWCアドバイザリーと契約したのだそうです。ファミマは特別委員会の意見を尊重し、2300円の応募は推奨せず株主の判断に任せるという異例の決着になったというのです。

この記事を読んでいたらもう少し成り行きを見守ったのかも知れませんが、2日前に平均単価2375円でファミマ株とはおさらばしてしいました。TOB期間は8/24まで。株主の皆さん、あと1ヵ月辛抱強く足掻いてみるのも一手です。