落日のひふみ投信

2018年12月下旬、東証マザーズに上場を予定していたレオス・キャピタルワークスは突如、コーポレート・ガバナンス上の問題が生じたとして、上場手続きの延期を決議、これを受けて東証は上場承認を取り消しました。某証券会社から100株の割り当てがあったので、上場承認取り消しと知り、少しがっかりした記憶があります。レオスという会社名を聞いてもピンとこない方が大多数だろうかと思いますが、個人投資家に人気の「ひふみ投信」や「ひふみプラス」の運用会社です。社長の藤野英人氏をはじめ経営陣にとって、上場延期は痛恨の出来事だったのでしょう、主幹事みずほ証券への恨み節も伝わってきました。

それから1年余り、SBIホールディングスがレオスの発行済株式総数の51.8%を取得、連結子会社化するというニュースが日経朝刊に小さく取り上げられました。「ひふみ投信」の長所はアクティブファンドタイプの独立系投資信託であるという点。新型コロナウイルス禍の影響で投資信託の運用成績は例外なく急降下、言葉は悪いですが、どうみてもレオスの身売りと映ります。10年に一度は必ず起こるイベントを乗り越え、ファンド規模を拡大しながら運用成績を向上させるのがプロというもの。このタイミングで早々とSBI傘下入りとは、カリスマファンドマネージャーとして知られる藤木氏にしては少々残念な気がします。

ひふみ投信リーマンショック直後の2008/10/1に設定されているため、これまで東日本大震災を除けば、大きな下げ相場の洗礼を受けてはいません。しかも震災後は自民党が政権を取り戻しアベノミクスが相場を後押ししたので、ひふみ投信だけがずば抜けて好成績だったわけでもありません。元来、中小型株市場を主戦場としてきた藤野氏の持ち味は、ファンド規模が順調に拡大するにつれ、喪われていったことになります。2020年3月の運用レポートを見ると、組み入れ比率上位10社にKDDI日本電信電話が含まれ、バランス型投信等との差異が急速に縮まってきているように見受けられます。TOPIXとの相関も3年前あたりと比べると高くなっています。

経済に著しい負の影響を与える経済学的事象は、レア・ディザスター(Rare Disaster)と呼ばれます。今般のコロナショックはリーマンショックを遥かに上回る規模の紛れもないレア・ディザスター。ファンドビジネスは再び輝きを取り戻せるのでしょうか。