2019年初春歌舞伎公演はビッグサプライズ!~十三代目團十郎誕生へ~

成人式の今日、清々しい青空の下、JR有楽町駅から歩いて新橋演舞場へ。歌舞伎座の昼の部(開演11:00)と勘違いして、開演より1時間以上前に現地に到着してしまいました。しばらくすると、カメラマンがふたり、慌ただしく自分の前を横切っていきます。続いて、演舞場スタッフがフライヤーを無言で配り始めるではありませんか。数分経ってから、少し気になったのでそのフライヤーを受け取ろうと人混みをかき分け、スタッフに近づき一枚受け取りました。

そこには、
速報! 歌舞伎座かわら版
2020年5月、6月、7月の歌舞伎座公演にて、
市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿襲名披露!
また、海老蔵長男堀越勸玄が8代目市川新之助初舞台!

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おいおい、劇場スタッフ、もっと騒げよと言いたくなりました。「かわら版だよー来年は十三代目市川團十郎誕生だよ」くらい声を上げるところなのに。こんな歴史的イベントの発表日に、海老蔵・勸玄君親子の共演を観られるとは、今年は春から縁起がいいわいなと独りごちた次第。

この日の演目は、「義経千本桜 鳥居前」、「極付幡随長兵衛公平法問爭(こんぴらほうもんあらそい)」、「三升曲輪傘売」。いずれも新春にふさわしい実に艶やかな舞台でした。「鳥居前」の舞台は、お正月らしく伏見稲荷大社前。廣松(父友右衛門が九郎判官義経役)が静御前を艶やかに演じ、ラストで獅童(忠信実は源九郎狐)が狐六方の引っ込みをユーモラスに披露します。「幡随長兵衛」では海老蔵が町奴長兵衛を演じ、倅長松を勸玄君が好演。長松は、面子を重んじ一人永野十郎左衛門邸へ乗り込もうとする長兵衛の背後に回り、左右に顔を振って必死で説得を試みます。劇中親子の今生の別れのシーンを実の親子が演じるわけですから、涙なくして観られません。結局、家族や手下の反対を押し切って長兵衛は一人水野の屋敷へ乗り込み、湯殿で討たれてしまいます。花道に近い席だったので、海老蔵が焚いた伽羅の甘い残り香がときおり鼻腔をくすぐりました。台詞や動きが随分増えて難しい役どころの長松を、勸玄君は見事に演じ切りました。新之助襲名にあたり、やりたい役は幡随長兵衛と言い切る勸玄君、さすが未来の海老蔵です。

最後は平成27(2015)年9月初演の「三升曲輪傘売」、新吉原で石川五右衛門(海老蔵)が傘売りに扮して曲輪の新造たちに傘商いをするというすじがき。舞台正面には満開の桜、その周りを逆V字型に置屋が軒を連ねます。見どころは着膨れした五右衛門の身体から次々と飛び出す色とりどり大小様々の傘々。まるでマジックショーを見ているようです。短い演目ながら、華やぎがあって、趣向に富んでいて、実に目出い舞台でした。

劈頭のかわら版サプライズに輪をかけたのは、傘売り五右衛門が正体を露わにした幕引きで観客席におひねりの振る舞いがあったこと。投げ込まれた手ぬぐいの一つをラッキーにもダイレクトキャッチ、こりゃ春から縁起がいいわいわいと内心ほくそ笑みました。手ぬぐいには「強烈ナ努力」と書かれていました。海老蔵が好きな言葉だそうです。

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