映画レビュー「オンリー・ザ・ブレイブ(“ONLY THE BRAVE”」(2018/6日本公開)

2019年のお正月休みは連続9日間、こんなに長いとあらかじめ分かっていたら、海外で過ごせば良かったと反省しきり。特に12月の第5週の株式市場が大荒れだっただけにポジションを早めにスクエアにして海外逃亡すべきだったと、余計にそんな思いが込み上げます。さはさりながら、久しぶりに多めに借りてきたブルーレイやWOWOWで映画三昧の日々。

劇場で見逃した作品群でマイ評点4以上は、実話に基づいた「ウィンストン・チャーチル」と本作「オンリー・ザ・ブレイブ」でした。拵えました感の強いラブストーリーや中途半端なエンタテイメントに出喰わすと、視聴後、浪費した時間の長さに必ず後悔の念に駆られます。その点、史実に基づいたドキュメンタリータッチの作品は迫力が違います。昨年11月、「キャンプ・ファイア」と命名された北カリフォルニアの山火事は、カリフォルニア州史上最悪の惨事となりました。山火事の恐ろしさはメディアの映像からも明らかです。温室効果ガスが地球を温め続けるかぎり、秋はますます暖かくなって乾燥し、より大規模で延焼速度の速い山火事が起こること必定です。

本作は、こうした大規模な山火事と闘う森林消防隊員の日常をテーマにした稀有の作品です。森林消防隊は狭い国土の日本では馴染みの薄い存在ですが、通常に建物火災の消火に比して、実に危険極まりない仕事だということがこの映画を見るとよく分かります。

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建物火災であれば、防火服で身を固めた消防隊員が消火栓から取り込んだ大量の水を放水し、大型消防車が出動して火災現場で八面六臂の活躍をする場面を想起しがちです。ところが、森林消防隊員は、広大な山野に信じられないようなヘルメット姿の軽装で現れ、スコップやチェーンソウを携えて分け入ります。飛行機による散水を除けば、消火方法は火で火を制する恰好です。さながら江戸時代の火消しです。乾いた空気はあっという間に延焼範囲を拡大させますから、火の手が回りそうなスペースの樹木を先回りして燃焼させたり、広範囲に穴を掘って防火帯を築きます。防火帯築造の際も間断なくスポットファイアと呼ばれる飛び火が消防隊員を襲います。

映画の主役はアリゾナ州プレスコット市の森林消防隊。彼らの移動用の四輪駆動車には”Trainee”と書かれたステッカーが貼ってあります。彼らはいわば地元の消防隊員、大規模な山火事となると米国農務省林務局直轄の精鋭部隊(「ホットショット」)の出番となります。現場では、地方自治体に帰属する彼らの消火スキルや知見が勝るのに、ホットショットに本来の役目を横取りされたりします。

映画は悔しい思いをする彼らが新人二人を仲間に加えて自治体初のホットショットに昇格し(2008年)、活躍の場を拡げていく様子を活写します.。名付けてグラニット・マウンテン・ホットショット。43歳の指揮官エリック・マーシュは血気に逸る20代の隊員にさらなる過酷な訓練を課して、一人前のホットショットクルーに育て上げていきます。その過程で家族や隊員相互の人間模様が綾なし、観客はときに泣かされ、最後は温かい気持ちにさせられます。

そして、2013年、ホットショット昇格から6年目、アリゾナ州で落雷をきっかけに発生した山火事がグラニット・マウンテン・ホットショットの運命を左右することに。胸を焦がすラストは涙なくして観られません。