極上のシネマコンサート〜「ニュー・シネマパラダイス」〜

この三連休の初日は、東京国際フォーラムで開催されたシネマコンサートへ。フィルムは大好きな「ニュー・シネマパラダイス(1988年)」。イタリア公開30周年記念のシネコン世界初演!と知って、2ヶ月以上前に先行予約していた公演でした。欧米で先行したといわれるシネマコンサートが日本に上陸し注目を浴びるようになったのはここ数年のこと。クラシックコンサートは敷居が高いと感じる人でも、お気に入りの映画をフルオーケストラの生演奏で楽しめるのですから、じわじわと人気が高まっているのでしょう。驚いたのは、開催場所が東京国際フォーラムのホールAだったこと。客席数が5000を超える都内屈指の大ホールを果たして埋め尽くせるのでしょうか・・・・・・余計な心配でした。公演は2日間、にもかかわらず初日の9/15、17時の開演直前に周囲を見渡せば、客席の9割近くがしっかり埋まっておりました。

89年に日本で初公開されたのは客席数わずか200足らずのミニシアター「シネスイッチ銀座」でした。口コミで評判となり異例のロングランを記録、単館映画興行成績No1に輝いた「ニュー・シネマパラダイス」の魅力は今も健在でした。会場に足を運んだ観客ひとりひとりがどこかノスタルジックな感懐を一様に抱いていたように感じます。

舞台はイタリアのシチリア島。映画は、冒頭、年老いた母親がトトに電話を掛けるシーンからスタートします。静かに奏でられるメインテーマのメロディがシチリアの青空と見事にシンクロして、懐かしい記憶を呼び覚まします。それは、30年間、故郷に戻らなかったトトの幼少時の記憶であり、同時に、初めてこの映画に触れたときの観客ひとりひとりの記憶でした。

巨匠エンニオ・モリコーネが紡いだ音楽が、シチリア島の小さな映画館を中心に繰り広げられる村人の暮らしにときに優しくときに哀しげに寄り添います。大編成の東京フィルハーモニー交響楽団のライブ演奏からは、映画で流れるBGMより総じて透き通った印象を受けました。スクリーンに集中しているときは、ライブ演奏だということを暫し忘れてしまいます。そして、沈黙が訪れるシーンになると再びライブだと気づかされるのです。20分間のインターミッションが終わると、フィルム抜きでテーマ曲が間奏曲として演奏されました。オーケストレーションだけを愉しむ時間が設けられているのも一興だと思いました。

映画のクライマックス、トトことサルヴァトーレがアルフレードの葬儀に参列するために30年ぶりに帰郷し、取り壊し寸前のニューパラダイス座で独り回想に浸るシーンでライブ演奏とシンクロする数分間が至高の時間でした。初めて経験したシネマコンサートが「ニュー・シネマパラダイス」だったのは、今年一番のセレンディピティのお陰に違いありません。