長瀞渓谷の散策(1)〜岩畳を歩く〜

GWに日帰りで行きたい景勝地No1といえば長瀞です。あくまで我が家の話ですが・・・自宅から関越自動車道(花園IC下車)経由でわずか1時間30分という距離感が絶妙なのです。尾瀬は少し遠いので首位の座を長瀞に譲った格好です。東京人は自然に親しめなくて可哀想だと思われがちですが、少し足を延せばそこいらの田舎より豊かな自然に触れる機会が多いのです。



4月の東京の夏日は9日間、観測史上最多だったそうです。最終日の30日は涼を求めて(というよりかき氷目当てか!)長瀞渓谷に向かいました。四季折々、長瀞渓谷が織りなす自然の美しさは比類がありません。この時期は「岩畳」に自生する藤も見頃を迎えます。秩父鉄道長瀞駅近くに<長瀞は天下の勝地>と書かれた石碑(渋沢栄一書)がありますが、文字どおり天下無双の景勝地だと思います。長瀞を訪れる度に「勝地定主無し」(白居易)という言葉を反芻したくなります。すばらしい景色にはきまった持ち主などいないとは至言ですね。

ブラタモリ長瀞篇に刺戟されて、今回は埼玉県立自然の博物館に足を運び勉強してきました。長瀞は「日本地質学発祥の地」と呼ばれ、博物館の前にはその石碑があります。長瀞渓谷の「岩畳」を構成する岩石は変成岩。地下深いところ(20km)に押し込まれ(6000〜7000気圧下200〜300度)水平方向に拡がり「片理」を形成、新しい鉱物(結晶片岩)が生成されやがて隆起します。層状の「岩畳」はまるでミルフィーユのようです。「岩畳」の岩石に「節理」(割れ目)が見られるのは、地殻上昇した際水平方向に引っ張られたからです。

「岩畳」の右前方に視線を移せば、「秩父赤壁」と呼ばれる断崖絶壁が聳えています。こちらは荒川が南北方向の「節理」を侵食して出来たものです。レッドクリフに因んだ命名でしょうか。さらに「虎岩」のある少し上流の河川敷まで歩くと、色とりどりの結晶片岩のみならず多種多様な岩石にお目にかかれます。




宮沢賢治は「虎岩」の「片理」や「節理」を短歌に認め、「粋なもやうの博多帯」に喩えています。文人墨客もうならせた長瀞渓谷の真髄を極めるにはまだまだ時間がかかりそうです。